お客様情報
■ 企業概要
二輪・四輪・ライフクリエーションの主要事業に加え、航空機・航空機エンジン、モータースポーツ、ロジスティクス、環境・安全・社会活動などを通じて、「移動の進化」と「暮らしの価値創造」をリード。グローバルで3,200万人のお客様に製品を提供している。
■ 本社所在地:
〒107-8556
東京都港区南青山2-1-1
■ 創業:
1948年(昭和23年)9月
■ 資本金:
860億円
■ 従業員数:
連結 219,722人
単独 22,675人
■ 関連企業数:
連結子会社 364社
持分法適用会社 71社
※2019年3月31日現在取材当時の情報です
※本事例取材はリモートインタビューの形で実施 *VSM(Value Stream Mapping)
- 導入ハイライト
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- 部門間の連携強化で現場の声を捉え“真に活用される”システムを実現
- VSMにより既存のシステム開発におけるボトルネック等を“見える化”
- 改善施策によりシステム開発におけるリードタイムを70%短縮
1948年の創業以来、二輪、四輪、ライフクリエーションなど、人々の生活を支え、また喜びを創出する各種製品の提供を通じて、常に時代に先駆けた価値創造に挑戦し続ける本田技研工業株式会社(以下、本田技研)。2017年には、「すべての人に、“生活の可能性が拡がる喜び”を提供する」というキーワードを掲げた“2030年ビジョン”を策定し、創業100年を超えても、存在感を期待され続ける企業であるために、次代に向けた新たなチャレンジを開始した。
同社の四輪事業本部に属する生産製造企画課は、担当業務の一環として、製造現場を支援し、その生産性向上に寄与する各種アプリケーションシステムを提供しているが、以前は、現場へのシステム提供までの時間やその利用価値といった面で課題を抱えていた。この状況を打破するため、同部門では、クリエーションラインの支援の下、DevOps Success Supportを導入し、システム開発工程に関する“見える化”を行い、改善施策を推進することで、大きな成果をあげた。
導入の背景:開発のリードタイムと提供システムの活用状況が課題に
「私が在籍する部門は、生産性を向上するための社内向けシステムを開発していますが、そのリードタイムと完成したシステムの現場での活用状況が課題となっていました」―以前のシステム開発における課題について、本田技研 四輪事業本部 完成車開発統括部 車両企画管理部 生産製造企画課(C)の船戸康弘氏はこう話す。
同部門でのシステム開発は、企画から開発、そして実際に現場で利用されるまでの期間が、早くても半年、長いものでは数年もかかっていた。また、長い期間を費やし完成したシステムが、十分活用されていないのではないかという懸念もあった。「何が問題であるかを明確化するためには、定量化した形で実態を把握し、適切な対策を打つ必要がありました。しかし当時、社内にそのようなノウハウは存在しなかったため、外部からの支援が必要であると考えました」(船戸氏)。
本田技研工業株式会社
船戸 康弘 氏
当初、船戸氏が想定していた改善箇所はインフラまわりであり、その対処によって開発の仕組みを整えたいと考えていた。「“Kubernetes”などのキーワードでインターネット検索を行う中、これらに関する豊富な経験を持つクリエ―ションライン株式会社の存在を知りました」(船戸氏)。早速、インフラ導入に関する支援の打診を行った船戸氏だったが、意外にもクリエーションラインからの提案は、「今、実際に何が問題になっているのかを、一度可視化してみませんか?」というものだった。こうして、2019年12月、両社によるプロジェクトがその第一歩を踏み出した。
システム関係者全員でVSMを実施し真の問題を見える化
「弊社では、DevOps導入サイクルにおける“現状把握”のフェーズで、現状の業務フローの見える化を行うサービスであるVSM(Value Stream Mapping)を提供しています。今回の本田技研様のプロジェクトでは、まず初めに関係者全員でVSMを実施し、課題を見える化させていただきました。全員が共通の認識を持つことが重要だからです。その後は優先順位の高い課題から潰していく形態を取りました」
クリエーションライン株式会社
笹 健太 氏
本田技研が導入を決めた、クリエーションラインの“DevOps Success Support”は、お客様と共にDevOpsの実践サイクルをスタートし、根付かせるための文化を作っていく活動を支援するサービスだ。当初実施される認識合わせのワークショップからスタートし、その後「現状把握」、「計画」、「実施」、「評価」という実践サイクルを回しながら、DevOpsの導入を進めていく。VSMは単独サービスとしても提供されているが、DevOps Success Supportの中でも、現状把握フェーズにおける重要なツールとなっている。
こうして進められた実践サイクルによって、同部門が抱えていた開発リードタイムに関わる課題や、活用されないシステムが開発される原因が次第に明らかになってきた。
「ムダ」が多い工程が明らかになりカイゼンの方向性が見えてきた
どの工程にどれだけの時間が費やされていたかという点は、企画、開発、現場の担当者全員が参加する形で進められたVSMで明らかになった。船戸氏は、「VSMを実施した時点では、当初考えていたKubernetesによる開発プロセスの改善より、前段階の企画の工程に大きな改善の余地があることが分かりました」と話す。それまで企画作業は、皆がそれぞれ1週間で資料を作り、1回約3時間の議論を行ってその結果を持ち帰り、また1週間後に更新した資料を持ち寄って議論するという対応を繰り返すことで、約3ヶ月もかかる状況となっていた。
また、活用されないシステムという点について、船戸氏は、「現場でヒアリングや調査を行った企画担当者が、例えば “この3つの情報を提供できれば現場の課題が解決する”ということで仕様書を作成します。そして、開発者には真意が十分に伝わらないまま、機能の情報が伝わります。数ヶ月後に仕様書通りのシステムを現場へ導入すると、要件は満たしているものの、現場としては、どうもしっくりこないシステムだと感じてしまい、結果として利用されないという状況が発生していたのです」と話す。
“企画段階で定義した機能が網羅されている”ということと、“実際に現場で役立つ”ということの間には大きな隔たりがある。現場でのヒアリングを基に、その後企画側だけがオフィスの中で検討して考え出した仕様は、現場でのユーザーが期待する使用感や雰囲気と大きく乖離してしまう危険性がある。「しかし今回は、開発者自身が、現場の担当者と対話をして、様々な画面を見せながら反応を確認し、本当に何が必要なのかという点を徹底的に話し合った結果、例えば『ここはグラフを使うのではなく、色を変えて表現する方が良い』といった改善点が次々に明らかになりました」(船戸氏)。
導入効果1:システム開発に関わるリードタイムを70%短縮
本田技研工業株式会社
渡邉 敬登 氏
導入効果2:部門間の連携強化で“真に活用される”システムを実現
当時、現場に近い立場で本プロジェクトに関わった、本田技研工業 四輪事業本部 生産技術統括部 パワーユニット生産技術部 パワーユニット設備技術課の渡邉敬登氏は、「新たに開発されたシステムの画面は、これまでとは見た目のインパクトが全然違うものとなっていました。以前は、このようなシステムは不要では?といった雰囲気が感じられましたが、今回は画面の設計過程に現場の担当も加わり、自らの要望を提示しながら構築したという経緯もあり、本当に現場が使いたくなるシステムが実現されたと感じました」と話す。
実際のユーザーと共に実施したワークショップ
さらに船戸氏は、「定性的な面では、関係者が在籍する組織の文化や風土が変化したと感じています。これまでは、“社内のルール” や “従来のやり方“ といった過去の人々が積み上げてきたものに縛られていましたが、今回のプロジェクトを通じて、実はこれらは変えても構わないものだと各メンバーが気付いた点は、重要だったと感じています。さらに、部門間を超えた連携が生まれ、それぞれの課題や意図をこれまで以上に共有することが可能となりました」と話す。
今回のプロジェクトを共に推進したクリエーションラインについて、船戸氏は「それぞれの担当者が非常に高い技術力を持っており、今回のプロジェクトで必要なツールやノウハウについても、様々な角度からカバーしてもらえたことを感謝しています」と話す。渡辺氏も「ソフトウェア会社は、IT業界の中に留まる形でビジネスを展開しているという先入観がありましたが、笹さんのように製造業の世界に対しても、まったく違和感なくサポートを提供いただける対応を見て、流石だと感じました」と強調する。
今後の展望:チームのスケーリング、開発効率の向上、そしてインフラのさらなる強化
DevOps Success Supportをきっかけに、劇的な進化を続けている本田技研だが、既に今後の展開もその視野に入っている。船戸氏は、「今後はチームの人数がさらに増えていくと思います。そこではまた新たな課題の発生が予想されるため、これらの課題の解決や人材育成という面でも、やるべきことは非常に多いと考えています。また、開発効率という面では、障害の発生を抑えるという面で、KubernetesやCI/CDの活用が増えると想定しています。さらに、インフラまわりの強化も不可欠となってくるでしょう。これらを考えると、クリエーションライン社の存在は非常に心強く感じており、今後もさらなるご支援を頂ければと願っています」とその抱負を語る。
開発チームの作業風景
今回は、サポートサービスという形でのプロジェクト参加となったクリエーションラインだが、オープンソースを中心とした、クラウド、OSS、アジャイル、DevOps、データ解析・機械学習等の先端技術について多くの経験および知識を有するITプロフェッショナル集団として、日々多くのお客様とそのビジネスを支援している。さらに、新型コロナウィルスの影響で、直接対面する形でのサポートが困難になることが予想されると、すぐにネットワークを介したリモートでの対応を開始し、現在(2020年5月時点)では、リモートサポートの形で本田技研を含む多くのお客様を支援している。
創業100年に向け、新たなチャレンジのスタートを切った本田技研工業。その現場を支える担当者達の生産性に寄与する、様々なシステムを提供する生産製造企画課にとって、クリエーションラインと提供サービスは、更なる成長を支援する存在となっている。
DevOps Success Supportは、答えをもらうのではなく、考え方や価値観を身につけるもの
大きな効果が得られた今回のプロジェクトで、その実現に寄与したクリエーションラインのDevOps Success Supportについて、船戸氏は、「自立型とも言うべきスタイルに非常に共感を得ました。製造業では、“答えや結果を出す”という形でサポートサービスを提供するコンサルティング会社が多い中、今回の支援サービスは、自分達で考える力を身に着けられるものとなっており、プロセスやフローを考える力が育成されました。また、課題ではないかと気付いていても、これまで“聖域”として踏み込めなかった領域、たとえば企画の工程などについても可視化できたことが有効でした。さらに、チームビルディング的な要素も含まれているため、本プロジェクトへの参画することで、企画、開発、現場の距離が縮まり、相談をしながら問題に対処できるようになりました」と話す。DevOps Success Supportでは、お客様側は、「回答を与えてもらう」のではなく、「より良いモノを探すための考え方や価値観を身に付けてもらう」ということを主眼に置いている。これによって、サポート期間が完了した後でも、自立した形でお客様自らが効果をあげていくことができる。