大規模な製造現場でのMongoDBとIIoTの活用 #MongoDB #IIoT #MongoDBAtlas #Realm
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本ブログは、MongoDB社のブログで2022年1月19日に公開された「Manufacturing at Scale: MongoDB & IIoT」の日本語翻訳です。
近年、デジタルトランスフォーメーションの分野では、大きな変革が起きています。スマートデバイスやスマートホーム、スマートカー、スマートシティなどによって、すべての人間が「つながる」ようになりました。その便利さゆえに、私たちはスマートデバイスを使い続けており、日々のタスクを自動化したり、日常生活での行動を洞察することができています。車のタイヤの空気圧の確認や、ストーブを点けたまま家を出ていないか等の確認にも、スマートデバイスを活用しています。
利便性と生産性の向上、インサイト(洞察)の強化、予測型のメンテナンスと自動化の実現を目指して、企業では、IoTやIIoT(産業用IoT)の導入がより大規模に進められていますが、私たちがスマートデバイスを利用する目的も同様です。製造業やエンジニアリングの分野では、IoTの果たす役割がますます重要になっており、製造前、製造後を含むすべての製造プロセスにおいて、多数のセンサーやデバイスをつなぐ環境が利用されています。原材料から製品あるいはスマート製品までを扱う製造プロセスへのIoTの導入はまだ始まったばかりです。サプライチェーン全体を通じて成功を収める製造企業にとって、IoTの導入は重要な差別化要因と進化していくでしょう。
IIoTのデジタルトランスフォーメーションで中心的な役割を果たすのはデータであり、データの生成、保存、分析方法が重要になります。IIoTでは、適切な意思決定を下すためにビジネス上の正確な最新のインサイトが得られるよう、大量のデータをほぼリアルタイムで収集、処理することが求められます。一方、現場では、OEE(設備総合効率)と品質を高め、無駄を減らすことができるよう、新しいコンポーネントやセンサー、アクターの導入が進んでおり、その結果、継続的な業務の最適化が達成されています。ほぼすべての新しいデバイスで、扱えるデータの種類が増えるため、そのようなデータを保存、分析できる、可用性に優れた柔軟でスケーラブルなデータプラットフォームが必要となります。
ITやOTの融合が進むにつれて、従来よりさらに多様で複雑なデータを統合、処理することも必要になっています。この結果、システムの全体像にさらに複雑な要素が加わることになったのです。MongoDBの汎用データプラットフォームでは、OTや時系列のデータセットをMongoDBに保存できます。また、レシピやデジタルツインを活用し、エッジからクラウド、モバイルデバイスに至るさまざまなシステムを対象として、包括的かつリアルタイムにいつでもどこでも、オンラインやオフラインで状態の把握や制御ができます。
コネクテッドファクトリーのモデル
MongoDBは容易に実装でき、また実装すれば、製造業におけるIIoTについてのデジタルトランスフォーメーションの課題を、柔軟性と拡張性に優れたデータプラットフォームを通じて解決できます。MongoDBの産業ソリューションチームでは、その具体的なデモを始めました。
デモでは、Fischertechnik社製の小規模なスマート製造ファクトリーのモデルを使用します。MQTT経由でデータを収集、送信し、MongoDB AtlasやRealmで処理します。このスマートファクトリーモデルは、実際の物理工場と同様に、IIoTのユースケースをMongoDBのデータプラットフォーム上に簡単に構築して、あらゆる業界の製造プロセスのデジタル化を可能にし加速できます。
Fischertechnikのモデルファクトリー自体は、エンジニアリング専攻の学生が、メーカーでの製造工程を学ぶトレーニングで広く利用されていますが、企業が実際に工場を立ち上げる際の、準備、建設、投資の計画モデルとしても活用されています。一見するとロボット工学のおもちゃのように見えますが、即稼働する本格的なものです。
モデルファクトリーは、IIoTのユースケースの基盤として機能し、複数のコンポーネント(倉庫、マルチプロセスステーション、ソートエリア)から構成されます。倉庫には、材料が蓄積、保管されます。処理が起動されると、モバイルクレーンで材料が取り出され、加工に移されます。この際、アイテムは赤や白、青など色別に選別され、適切な場所に送り届けられます。モデルファクトリーでは、材料の発注や保管、最終製品の製造や注文などの処理が行われます。それらの過程全体を通じて、商品の種類や色、温度などの環境、在庫量などを検知するセンサーが複数設置されています。監視カメラは、ファクトリー内で発生する動きを検知し、写真などによるアラートをMQTT経由で送信します。これを受け、スマートファクトリーからリアルタイムで出力されるさまざまなデータのシミュレーションが行われ、追跡、監視、視覚化、アラート、機械学習アルゴリズムの入力情報に利用されます。
ファクトリーのインフラストラクチャ
Fischertechnikファクトリーには、設定不要ですぐに使えるいくつかのダッシュボードが付属しています。これらのダッシュボードは、ファクトリーに組み込まれたWLANルーター経由でFischertechnikのクラウドにつながります。ダッシュボードには次のような機能があります:
- カスタマビュー:ネットショップのインターフェイスで、製品を注文すると、サプライチェーン処理が起動されます。
- サプライヤービュー:材料の発注プロセスを視覚化・表示します。
- プロダクションビュー:カメラやNFC/RFIDリーダーから得られた、ファクトリーの状態や製造プロセス、センサー値を視覚化します。
このようなユースケースでのMongoDBのメリットを説明する目的で、MongoDBのチームは、JavaScript、ReactJS、Realmを使用して新しいアプリを開発しました。このアプリは、MongoDBのデータプラットフォームをベースに、データのフローとプロセスを統合、効率化します。アプリでは、次のような機能が提供されます:
- MongoDB Realm Order Portal:ReactJSのWebアプリケーションで、新製品のオーダーや、オーダーの処理状況を追跡できます。
- データの視覚化:MongoDB内に収集されるさまざまな種類のデータをMongoDB Chartsで視覚化し、新たな気付きを得ることができます。
- アラート管理アプリ:MongoDB RealmとRealm Syncを利用し、アラートの通知や管理をオンラインとオフラインで行うモバイルアプリです。
ファクトリーの各マシンは、LinuxベースのコンピューターであるTXTコントローラーによって制御されています。このコンピューターは、MQTTでコントローラー同士と相互に、あるいは、クラウドベースのアプリケーションと、通信を行います。MQTT経由で送受信されるデータには、基本的に2つのタイプがあります。アクションをトリガーする各種コマンドと、イベントや時系列のセンサーデータのストリーミングです。メインのTXTコントローラーはMQTTブローカーを実行し、HiveMQクラウド内のHiveMQ MQTTブローカーに任意のトピックを複製します。そこから、Redpanda Kafkaコンテナがデータストリームを収集し、MongoDBに書き込みます。MongoDB内のデータはMongoDB Chartsで視覚化され、リアルタイムのインサイトとして利用できるようになります。
MongoDB Order Portalは、Realm Web SDKとサーバーレスのGraphQL APIを利用します。MongoDB Atlasからのデータの抽出には、GraphQLを使用し、MongoDBクラスターへの新しいオーダーの追加(新しいドキュメントの挿入)には、Web SDKを使用します。新しいオーダーがAtlasのデータベースに追加されると、Atlasのトリガーが実行されます。このトリガーにより、MQTTメッセージがHiveMQ MQTTブローカーに直接送信され、オーダーの処理を指示するアラートがファクトリーに発信されます。HiveMQブローカーは、オーダーをファクトリーに複製して処理します。
ファクトリーからデータを受信する場合の例を以下に示します。ファクトリーからは、大量のライブデータがストリーミングされます。データの受信には、HiveMQとKafkaが使用されます。ファクトリーのMQTTブローカーは、クラウドのHiveMQブローカーにブリッジ接続されます。MQTTソースやMongoDBシンクコネクタで、HiveMQブローカーのKafka ConnectからMongoDB Atlasへデータが移動されます。
MongoDBとIIoT
製造業におけるデジタル化では、ITとOTを連携させて、両分野のデータを融合すると共に、人とアルゴリズムがそれらのデータにアクセスできるようにして、自動化を高いレベルで実現し、効率を高め、無駄を減らします。MongoDBのアプリケーションデータプラットフォームは、多種多量なデータに対応できるよう最適化されたデータプラットフォームであり、大量のデータが存在する環境でも最適な意思決定ができるよう支援する、強力なクエリ言語が利用できます。言うのは簡単ですが、Atlasなら、その機能のエコシステムを通じて、これらの複雑な要件に対応できます。具体的には次のような機能があります:
リアルタイムアナリティクス:コネクテッドデバイスの急増に伴い、IIoTが注目を集め続けている中で、データの処理能力の限界が、日々打ち破られています。シームレスなスケーリングが可能なAtlasは、センサーやイベントの大量データを取り込むことができるため、リアルタイムアナリティクスをサポートしており、重要なイベントや変化をその発生時点で把握できます。
動的なスケーラビリティ:MongoDB AtlasとMongoDB Realmでは、スケーリング機能が自動化されているため、小規模のシステムからスタートし、需要の増減に合わせてクラスターの規模を動的に調整できます。特に、センサーのデータが時間の経過に伴い古くなったときには、S3などのオブジェクトストアに自動でデータがオフロードされます。データは新しいデータも古いデータも単一のAPIから照会できます。
時系列:MongoDB 5.0では、時系列のデータをネイティブにサポートしており、クラスター型のインデックスで最適化されたストレージや、トレンドの分析と異常の検知をすばやく処理できるよう最適化された時系列のクエリオペレーターが利用できます。時系列のデータを、同じデータプラットフォーム内にあるデジタルツインモデルなどの他のデータ構造と組み合わせれば、テクノロジーを追加したり、ETLのプロセス・データを複製することが不要になるので、複雑な要素や、デプロイ作業、コストが大幅に削減されます。
データ収集や分析に使用するMongoDBのデータベースは、工場の傍らに設置でき、工場がクラウドにつながっていなくても問題ありません。集約前のデータやRawデータはシームレスに複製され、パブリッククラウドにストリーミングされて、ファクトリー全体でグローバルに閲覧できます。
また、MongoDB AtlasをベースにしたサーバーレスのバックエンドであるRealmでは、REST/MongoDB DataやGraphQL APIを通じ、アプリケーションやシステムを容易に統合できます。また、モバイルデバイスとデータを同期できるので、従業員支援のユースケースをはじめとするオフラインファーストのユースケースに役立ちます。
IIoTは、成長とイノベーションを実現する大きなチャンスをもたらす、可能性を期待できる分野の1つです。新たなレベルのイノベーションを実現するには、レジリエンスの高い多機能のデータプラットフォームが不可欠です。それは、複雑さを抑え、開発者の効率を高め、データの複製や統合の処理を削減しながら、一方では需要の増減に柔軟に対応できるプラットフォームです。
スマートファクトリーのモデルをAtlasやRealmといち早く結び付け、それを基にイテレーションを実施してMongoDBのチームが一から生み出したこのソリューションは、製造業のユースケースで弊社が実現しているイノベーションのごく一部に過ぎません。MongoDB AtlasおよびMongoDB Realmの詳細と、製造業とIIoTのニーズに対応するこれらソリューションの大手企業における事例については、こちらをご覧ください。
MongoDBの産業ソリューションチームから、IIoTに関する一つ目のブログをお届けしました。次の記事は今しばらくお待ちください。