【Agile Kata Series】Part 4 : カタの派生 – カンバンのカタ / プロダクトのカタ / EBM

今回の「アジャイルのカタ」シリーズでは、トヨタのカタから派生したものを紹介します。
- Part 1 : アジャイルのカタの概要
- Part 2 : アジャイルのカタの要素 - 改善のカタ / コーチングのカタ / アジャイル
- Part 3 : カタ体験ワークショップの紹介 ~ Kata in the Classroom ~
- Part 4 : カタの派生 - カンバンのカタ / プロダクトのカタ / EBM
カンバンのカタ
カンバンのカタは、トヨタのカタをソフトウェア開発のカンバンに適用したものです。書籍:カンバン仕事術や著者のホーカン・フォスのブログで取り上げられていた内容を、下記に紹介します。
カンバンのカタは、以下の要素で構成されています。
- 日常のカタ - デイリーミーティングに改善作業を含める方法
- 改善のカタ
- コーチングのカタ
日常のカタが新たに追加されていますね。日常のカタにおける5つの質問は、下記のようになっています。ボードやフローなど、カンバンにより親和性が高い質問が加えられています。
デイリーミーティングの5つの質問
- 何を達成しようとしているのか?
- 今はどこにいるのか?
- ボードを右から左に歩く
- 今の障害物は何か?
- 何がフローを妨げているか?
- (ワークフローの定義やWIP制限などに対して)どのような逸脱があるか?
- 次のステップは何か?何を期待するのか?
- 次のステップから学べるのはいつか?
プロダクトのカタ
トヨタのカタを、プロダクトマネジメントにも応用している動きがあります。
「プロダクトのカタ」は、書籍:プロダクトマネジメント - ビルドトラップを避け顧客に価値を届けるの著者メリッサ・ペリによって提唱されています。プロダクトのカタは、以下の4ステップから構成されており、それぞれ改善のカタの4ステップと対応しています。

なお、アジャイルのカタの考案者ジョー・クレブスとメリッサ・ペリが、ポッドキャストで語っているエピソードがあります。改善のカタをプロダクトのカタとして応用した話に加えて、「ビルドトラップとカタ」「カタとスクラムとの比較」などについても語られている興味深いエピソードですので、気になった方はチェックしてみてください。
EBM
EBM(エビデンスベースドマネジメント)もまた、トヨタのカタに影響を受けたフレームワークです。
EBMでは、組織のゴール達成を支援するために、「戦略的ゴール」「中間ゴール」「即時戦術ゴール」といった段階的なゴールや、そのゴールに向けた実験のステップが組み込まれています。その際、EBMガイド中で下記のような記載があります。
- 『図は Mike Rother の「改善のカタ」の改作である』と明記されている
- 2020年版のEBMガイドでは、「ターゲット状態」といった改善のカタ由来の用語が使われていた(2024年版では、よりEBMに即した「即時戦術ゴール」に置き換わっている)
EBMの各ゴールと、改善のカタの4ステップとのマッピングは、以下の図のように捉えています。

個人的には、EBMガイドのゴールに対する説明だけでは、実際のゴール設定や運用を理解しづらい状況でしたが、改善のカタと対比させることにより理解しやすくなりました。トヨタのカタの書籍や参考文献と照らし合わせながら「EBMでのゴールをどういう順番(ステップ)で考えるといいか」や「各ゴールで抑えておくべき性質は何か」「ゴール達成に向けたアクションはどう進めるといいか」などを考えやすくなったのです。
今回は、カタの派生について紹介しました。カタは柔軟性が高く、様々な分野に応用できるし応用されているということが、具体例とともに理解できたのではないでしょうか。
これらの派生例を参考にしながら、カタの適用イメージを深めていってもらえればと思います。