fbpx

【用語解説】モダナイゼーション

モダナイゼーションとは?

モダナイゼーション(Modernization)とは、主に老朽化した既存の基幹業務システムを、現代のニーズや最新技術に合わせて刷新・置き換えることを指します。「既存システム」には、在庫管理システムや販売管理システム、メインフレームで稼働する大型汎用機、オフコンを使ったシステムなどが含まれます。これらのシステムは、多くの場合、導入から数十年が経過しており、企業にとって重要な情報資産であるデータが蓄積されていますが、同時に時代遅れのテクノロジーや業務プロセスと密接に結びついています。

モダナイゼーションの目的と背景

モダナイゼーションの主な目的は、老朽化したレガシーシステムの問題点を解消し、ビジネスのスピードや柔軟性を向上させることにあります。システムの劣化や新たなニーズへの対応の遅れが原因で、システムの使い勝手が悪化し、業務プロセスの変更が困難になる場合も多いです。また、システムの内部構造がブラックボックス化することで、エンジニアの退職などによって保守・運用が難しくなるリスクもあります。

日本企業では特に、メインフレームを使った基幹システムを長期間使用し続けているケースが多く、機能追加やカスタマイズのたびにコストや手間が増大します。これにより、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)の進展が妨げられ、「2025年の崖」という経済産業省が提起した問題が注目されるようになりました。このレポートでは、日本企業が非効率なレガシーシステムを使い続けた場合、2025年には日本全体で年間12兆円もの損失が生じるとされています。

モダナイゼーションは、単なるシステムの更新にとどまらず、ビジネスプロセス全体の最適化と新たな価値の創出を目指す取り組みであり、企業の持続的な成長と競争力向上に不可欠なプロセスといえます。

【レガシーシステムとは】

レガシーシステムとは、過去の技術や仕組みで構築されている古いITシステム(ハードウェア、ソフトウェア、アプリケーション)を指す言葉です。「レガシー(legacy)」は“遺産”や“相続財産”といった意味があり、これらのシステムは企業にとって過去の資産である一方で、時代遅れのシステムとして捉えられることもあり、以下のような課題を抱えていることが多いです。

  1. ビジネスのトレンドや変化への対応が困難
  2. システムの肥大化・複雑化・ブラックボックス化
  3. 性能・俊敏性・拡張性の不足
  4. 保守・運用コストの増大

これらのデメリットを解消するためには、システムのモダナイゼーション(Modernization)やマイグレーション(Migration)が必要です。これらのプロセスを通じて、レガシーシステムを現代の技術や業界標準に合わせて刷新することで、ビジネスのスピードや柔軟性の向上を図り、競争力を維持・強化することが目指されます。

モダナイゼーションとレガシーマイグレーションの違い

モダナイゼーション(Modernization)とレガシーマイグレーション(Legacy Migration)は、どちらもレガシーシステムからの脱却方法として用いられますが、それぞれのアプローチと目的には明確な違いがあります。

  • 引き継ぐか完全に置き換えるか
    • モダナイゼーションは既存システムの資産を引き継いで近代化するのに対し、レガシーマイグレーションはシステム全体を別の環境へ移行し、システムの構造自体は変えません。
  • 目的の違い
    • モダナイゼーションはビジネスの拡大や柔軟性の向上を目指すのに対し、マイグレーションは運用コスト削減や効率性の向上を主な目的としています。

自社のレガシーシステムの特性や状態に応じて、最適な選択を行うことが重要です。

モダナイゼーション実行のメリット

1. 柔軟性・俊敏性の向上

レガシーシステムは古い技術や限られたスキルセットに依存しているため、ビジネス環境の変化に迅速に対応することが難しい場合があります。モダナイゼーションにより、最新の技術を導入することで、新しい業務プロセスや商品の導入がスムーズになり、ビジネスの俊敏性が向上します。

2. コスト削減

レガシーシステムの保守や運用には多大なコストがかかることが多いです。モダナイゼーションによって効率的な新技術を導入することで、システム運用のコストを削減し、新規開発や他の戦略的投資にリソースを割り当てることが可能になります。

3. 拡張性の強化

モダナイゼーションは、システムの構造を密結合から解放し、機能の追加や拡張、変更が容易なアーキテクチャを構築します。これにより、ビジネスニーズに応じた柔軟なシステムの拡張が可能となり、事業の拡大や進化に対応しやすくなります。

4. データの利活用促進

レガシーシステムでは、データの分断や複雑な連携がネックとなり、データ資産を十分に活用できない場合があります。モダナイゼーションにより、データへのアクセスが容易になり、ビジネスインサイトの創出や顧客体験の向上に貢献します。

5. 生産性・品質の向上

古いシステムでは、開発・運用プロセスが柔軟でないことが多く、改善が困難です。モダナイゼーションを通じて、システムの可視化とアーキテクチャの再設計を行い、DevOpsやSREなどの最新の運用手法を適用することで、開発と保守の生産性および品質を向上させることができます。

6. パフォーマンス・可用性の向上

モダナイゼーションにより、システムのパフォーマンスが改善され、可用性が向上します。また、最新のセキュリティ対策の実装により、システムの耐障害性やセキュリティが強化され、システムの応答時間やダウンタイムが短縮されることで、ビジネスの生産性と継続性が向上します。

7. セキュリティ強化

古いシステムは、最新のセキュリティ要件に対応できていないことが多く、サイバー攻撃のリスクが高まります。モダナイゼーションにより、最新のセキュリティツールやプロトコルを導入することで、セキュリティを強化し、企業のリスクを低減することができます。

8. 属人化の解消

レガシーシステムは長年の運用で複雑化し、その維持管理が一部の熟練者に依存する「属人化」の問題が発生することがあります。モダナイゼーションにより、業務の標準化とプロセスの可視化が進み、属人化から脱却することが可能になります。

モダナイゼーションの導入により、システムの効率化やコスト削減、柔軟性の向上、セキュリティ強化など、多岐にわたるメリットが得られます。これにより、企業は競争力を高め、持続的な成長を促進することが期待できます。

モダナイゼーション成功のポイント・注意点

ポイントを意識して計画的にモダナイゼーションを進めることで、成功への道を切り開くことができます。

  1. 現行システムの徹底的な分析と明確化
    現行システムの利用状況を分析し、システムの機能や構造を「変えない(変えられない)部分」、「変えられる部分」、「変えなければならない部分」の3つに分類します。特に「変えられる部分」については、刷新後のシステムに合わせた業務の変革も視野に入れるべきです。古いシステムの独自仕様にこだわりすぎると、モダナイゼーションのメリットを十分に享受できない可能性があるため注意が必要です。
  2. 業務プロセスの見直しと改善
    モダナイゼーションは単なる技術の刷新ではなく、業務改善や業務改革と合わせて行うことが重要です。システムのモダナイゼーションと同時に業務プロセスも見直すことで、システムと業務の両方を最適化します。
  3. 現場とのコミュニケーションの確保
    モダナイゼーションの計画段階から現場のスタッフを巻き込み、意見を反映させることが重要です。定期的な意見聴取や情報共有の場を設け、現場とのコミュニケーションを円滑に進めることで、現場の理解と協力を得ることができます。
  4. IT資産の可視化
    モダナイゼーションを成功させるためには、まず現行のIT資産を可視化し、全体像を把握することが必要です。これにより、無駄な機能やコストを明確にし、最適な改善計画を立てやすくなります。
  5. 目的の明確化とリスク評価
    モダナイゼーションの目的を明確にすることで、一貫性のある適切な判断を迅速に下すことができます。また、リスク評価を行い、潜在的な問題点を洗い出して適切な対策を講じることが重要です。
  6. 最適な技術とシステムの選択
    システム利用者のニーズや課題を正しく把握し、それを解決するために最適な技術やシステムを選択します。担当者へのアンケートやヒアリングを通じて現場の声を反映させることが求められます。
  7. 現場のメンバーのプロジェクト初期からの参加
    モダナイゼーションのプロジェクトには、現場のメンバーを初期段階から参加させることで、現場のニーズを反映したシステム設計が可能になります。また、現場の理解と協力が得られやすくなり、スムーズな導入が期待できます。
  8. IT人材不足への対応
    モダナイゼーションを進める中で、IT人材の不足が問題になることがあります。これに対処するために、システム開発ができる環境構築や、ITベンダーに依存しない自社内での対応能力の向上が求められます。

モダナイゼーションの5つの手法

  1. リプレイス
    • 現行システムの業務目的を洗い出し、その目的を達成するために新しいシステムを構築する手法。システム全体を再構築し、ハードウェアやソフトウェアを全面的に刷新します。標準化されたパッケージの利用なども行われます。
    • メリット: 最新のビジネスモデルや業務プロセスに対応しやすく、DX推進に適しています。
    • デメリット: 全面的な再構築のため、コストや作業負荷が高くなることがあります。
  2. リホスト
    • 現行システムのプログラムを変更せず、ハードウェアやOS、ミドルウェアを新しいシステム基盤に移行する手法。主にメインフレームからサーバーへの移行や、オンプレミスからクラウドへの移行を行います。
    • メリット: コストを抑えながら迅速に移行でき、業務継続性も確保されます。
    • デメリット: レガシーシステムの課題をそのまま引き継ぐ可能性があり、最新テクノロジーへの対応が難しいことがあります。
  3. リライト
    • 現行システムのアプリケーションソフトウェアのコードを新しいプログラミング言語に書き換える手法。コードの自動変換ソフトを利用する場合もありますが、コードや設計の分析・解読が必要です。
    • メリット: 現行システムを維持しつつ、技術更新が可能です。
    • デメリット: 書き換え前のドキュメントが正確に管理されていないと、作業が困難になる可能性があります。
  4. リファクター
    • 使用するプログラミング言語や機能を変えずに、コードの効率性や保守性を改善するためにコードを整理・調整する手法。モダナイゼーションそのものというよりは、その準備段階として利用されます。
    • メリット: コードの構造を整理し、保守性を向上させることができます。
    • デメリット: コード自体がレガシー化している場合、効果が限定的です。
  5. リドキュメント
    • 現行システムのドキュメントを再整備する手法。古くなったドキュメントを更新し、システムの可視化や運用性・保守性の向上を図ります。リファクターと同様に、モダナイゼーションの準備段階として利用されます。
    • メリット: システムの属人化を防ぎ、管理しやすくします。
    • デメリット: ドキュメントを整備しても、システム自体のレガシー化のリスクは依然として残ります。

これらの手法を適切に組み合わせることで、モダナイゼーションの目的に最も適した形でシステムを刷新・改善することができます。それぞれの手法にはメリットとデメリットがあるため、現行システムの状態やビジネスのニーズに応じて最適なアプローチを選択することが重要です。

モダナイゼーションを実行する流れ

実際にモダナイゼーションを進めていくにあたって必要なステップを以下にまとめます。

  1. 対象の明確化と現状の可視化
    モダナイゼーションを行う対象システムやスコープを明確にします。まず、現行システムの現状を可視化し、どの部分をモダナイゼーションするのかを決定します。これにより、移行が必要なシステムや機能、課題点が把握できます。
  2. 目的の明確化とゴール設定
    置き換えるシステムの検討を行い、モダナイゼーションの目的を明確にします。ビジネスやIT戦略に基づき、モダナイゼーション後のシステムのゴールイメージを具体的に描きます。これにより、システム刷新の方向性が定まり、プロジェクトの成功基準が明確になります。
  3. 手法の選択と具体的な計画作成
    モダナイゼーションの手法(リプレイス、リホスト、リライトなど)を選定します。その後、必要な予算や人員、リソースを算出し、具体的な移行計画を立てます。計画にはスケジュールの設定やリスク管理、移行ステップの詳細が含まれます。
  4. 実行とリソースの確保
    作成した計画に基づいてモダナイゼーションを実行します。この段階では、必要な人員や技術を確保し、スケジュール通りに進めることが求められます。実行中は、進捗管理やコミュニケーションを適切に行い、計画の遅延や問題に対応します。
  5. 効果測定と継続的な改善
    モダナイゼーションが完了したら、目標に対する効果測定を実施します。新システムが設定したゴールに合致しているか、期待するパフォーマンスを発揮しているかを評価し、必要に応じて調整や追加の改善を行います。継続的な改善によって、システムがビジネスの変化に柔軟に対応できるようにします。

これらのプロセスを通じて、モダナイゼーションは計画的かつ効果的に進行し、目標を達成するためのシステム刷新が実現されます。

まとめ

モダナイゼーションは、最新技術を活用してレガシーシステムの構造そのものを変革する取り組みです。モダナイゼーションの主な手法はそれぞれコストや作業負担、レガシー解消度が異なりますので、効果的に進めるにまずは自社の現状を分析し、最適な手段を選定するための体制を整備することが重要となってくるでしょう。

関連サービス

関連ブログ

新規CTA