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【用語解説】クラウドネイティブ(CloudNative)

クラウドネイティブ(CloudNative)とは?

クラウドネイティブは、クラウドコンピューティング環境においてアプリケーションを構築、デプロイ、管理するためのソフトウェアアプローチです。主に、現代の企業が求める高度にスケーラブルで柔軟性があり、迅速に更新可能なアプリケーションを実現するために用いられます。このアプローチでは、クラウドの特性を最大限に活かし、分散コンピューティングを活用したアプリケーションの構築と実行を行います。

また、その技術的特徴により、企業は迅速に市場の変化に対応し、高いスケーラビリティと回復力を持つシステムを実現することができます。クラウドネイティブはデジタルトランスフォーメーションを支える重要な要素であり、現代のビジネスにおいて不可欠な技術となっています。

クラウドネイティブの推進団体

クラウドネイティブ技術の普及と標準化を推進する団体として、2015年にLinux Foundationのプロジェクトとして発足したCNCF(Cloud Native Computing Foundation)が挙げられます。CNCFは、600以上の団体が参加し、クラウドネイティブの定義やガイドラインを提供しています。CNCFの定義によれば、クラウドネイティブは単なる技術の組み合わせだけでなく、イノベーションを継続的に維持し、競争力を高めるための戦略的なアプローチでもあります。

クラウドネイティブのメリット

クラウドネイティブは、クラウド環境を前提にアプリケーションを構築・運用するアプローチであり、企業に多くのメリットをもたらします。

1. コスト削減

クラウドネイティブの採用により、物理インフラの調達・運用・保守にかかるコストを削減できます。オンプレミス環境と比較して、クラウドサービスのベンダーが多くの管理業務を担うため、人件費の削減も期待できます。また、リソースをオンデマンドで必要な分だけ使用するため、効率的なコスト管理が可能です。

2. 環境構築のスピード向上

クラウドネイティブのアプローチでは、コンテナやマイクロサービスを利用することで、従来のオンプレミス環境よりも迅速に環境を構築できます。これにより、新しいサービスや機能の提供までの時間を短縮し、ビジネスのスピードアップが図れます。

3. 高い可用性と回復力

クラウドネイティブ技術により、システムは高い可用性を持ち、障害時の影響も最小限に抑えられます。マイクロサービスによりシステムが複数の小さなサービスに分割されているため、1つのサービスに障害が発生しても他のサービスに影響を与えません。また、コンテナの再作成のみで迅速に復旧が可能です。

4. 柔軟な変更対応

クラウドネイティブアプローチでは、継続的な変更を前提としてシステムが設計されています。そのため、ビジネスニーズや市場のトレンドの変化に合わせて、アプリケーションやインフラを迅速かつタイムリーに変更することができます。

5. 効率性の向上

DevOpsや継続的デリバリー(CD)などのアジャイルなプラクティスを活用し、開発プロセスを自動化することで効率性を高めます。これにより、スケーラブルなアプリケーションを迅速に構築し、運用にかかる手間を減らすことができます。

6. リソースの最適化とオンデマンド利用

クラウドネイティブ環境では、必要なリソースを必要な分だけオンデマンドで利用できるため、リソースの無駄がなくなります。これにより、ピーク時のリソース増強や、閑散期のリソース縮小を容易に行え、コストとリソースの最適化が可能です。

7. 信頼性と冗長性

クラウドネイティブアーキテクチャでは、システムの冗長化が容易であり、システムの信頼性が向上します。これにより、システムのダウンタイムを最小限に抑えつつ、安定したカスタマーエクスペリエンスを提供できます。

クラウドネイティブは企業の競争力を高め、デジタルトランスフォーメーションを促進する重要な要素となっています。

クラウドネイティブアーキテクチャとは

クラウドネイティブアーキテクチャは、クラウド環境の利点を最大限に活用して設計されたソフトウェアやシステムの構造を指します。このアーキテクチャは、クラウド上でスケーラブルなアプリケーションを効率的に構築し、運用するためのソフトウェアコンポーネントの集合であり、従来のオンプレミスインフラストラクチャに依存しない設計となっています。

クラウドネイティブアーキテクチャのアプローチは、イノベーションを加速させ企業が市場の変化に迅速に対応する力を提供します。クラウドネイティブアーキテクチャの採用により、企業は競争力を維持しながら、スケーラブルで堅牢なアプリケーションを構築することができます。

クラウドネイティブアーキテクチャの原則

1. 自動化の導入

自動化は、クラウドネイティブアーキテクチャの設計において重要な要素です。初期の導入コストは高くなる可能性がありますが、中長期的には手動の作業を減らし、効率的な運用を実現します。自動化は、デプロイメント、スケーリング、リカバリーなど、システムの多くのプロセスに適用されます。

2. ステートレスなシステム設計

クラウドネイティブアーキテクチャでは、コンポーネントをできるだけステートレス(状態を持たない)に設計することが求められます。これにより、システムの柔軟性とスケーラビリティが向上し、システムのコンポーネントが独立してスケールや再起動を行うことが容易になります。状態データは、外部の永続ストレージに保存することが推奨されます。

3. マネージドサービスの活用

クラウドネイティブアーキテクチャでは、クラウドプロバイダーが提供するマネージドサービスを活用し、システムの運用負荷を軽減します。これにより、インフラ管理の手間を省き、開発チームはコア機能に集中できます。マネージドサービスを利用することで、時間とコストの節約が可能になります。

4. 多層防御によるセキュリティ強化

クラウド環境では、内部と外部の境界が曖昧になるため、セキュリティは重要な課題です。多層防御のアプローチを採用し、各コンポーネント間で認証を必要とすることで、セキュリティを強化します。これにより、潜在的な脅威に対する防御を強化します。

5. 継続的なアーキテクチャの改善

クラウドネイティブアーキテクチャは常に進化しているため、システムの最適化と改善を継続的に行うことが重要です。時代やビジネスのニーズ、技術の進化に対応し、システムのパフォーマンスや効率を向上させるための投資を惜しまないことが求められます。

6. レジリエンスと冗長性

クラウドネイティブアーキテクチャでは、システムの稼働を維持するために、冗長性や地域のデプロイ、データの複製を利用してレジリエンスを高めます。障害が発生することを前提に設計し、迅速な復旧が可能なシステムを構築することが求められます。

7. レイテンシの最小化

システムの応答時間を最小限に抑えることも重要な原則です。ユーザーの要求とシステムの応答の間の遅延を抑制するため、アーキテクチャ全体の効率を考慮した設計が必要です。

8. 透明性と観測性の確保

システムの各コンポーネントは、観測性を確保するためにある程度の透明性を持つように設計されます。これにより、システムの状態を把握し、問題が発生した際には迅速に対応できます。透明性の確保は、自動更新やシステムの健全性の確認にも役立ちます。

クラウドネイティブアーキテクチャのこれらの原則に従うことで、スケーラブルで柔軟、そして効率的なクラウドベースのシステムを構築し、運用することが可能になります。これにより、企業は迅速に市場の変化に対応し、競争力を維持することができます。

クラウドネイティブの注意点

クラウドネイティブアーキテクチャは、クラウド環境でのシステムの効率的な運用を実現するための設計手法ですが、その導入や運用にはいくつかの注意点があります。

1. システムの可視性と管理の難しさ

クラウドネイティブ環境では、コンテナやマイクロサービスが複雑に連携するため、システム全体の状態やボトルネックを把握するのが難しくなることがあります。障害が発生した場合、どのコンテナやサービスが原因なのかを特定するのに手間がかかることがあります。また、クラウドネイティブなプラットフォームは開発者がテスト環境の延長で構築できることもあり、インフラエンジニアによる厳密なセキュリティや環境設定が欠如する場合があります。このような状況が「シャドーIT」の問題を引き起こし、システム管理者が把握しきれない部分が発生することがあります。

2. セキュリティ設定の複雑さ

クラウドネイティブアーキテクチャでは、セキュリティ設定や環境設定の適切なバランスを見つけるのが難しいことがあります。クラウドサービスの種類によって対応すべきセキュリティ範囲が異なり、その線引きが曖昧になることもあります。必要なセキュリティ対策を見誤ると、情報漏洩やその他のトラブルにつながるリスクがあります。また、クラウド環境では外部と内部の境界が不明確になるため、ネットワークセキュリティへの配慮が欠かせません。

3. アーキテクチャの変更に伴うコストと時間

オンプレミス環境で運用していたシステムをクラウドネイティブに移行する際、単純に既存のアーキテクチャをそのままクラウドに移行するだけでは不十分です。アーキテクチャの再設計が必要であり、その過程には大きなコストと時間がかかります。また、移行プロセスでの失敗やトラブルを避けるためには、システム全体を見直し、全社的な意識改革も必要になります。

4. 専門知識を持つ人材の確保の難しさ

クラウドネイティブ技術に精通したエンジニアは市場に多く存在しないため、優秀な人材の確保が大きな課題です。さらに、クラウドネイティブな環境は常に変化し続けているため、柔軟な思考と高い適応力を持ったエンジニアが求められます。適切な人材を見つけ、長期間にわたってモチベーションを保ちつつ、さらにスキルアップを促すための育成やマネジメントも企業側の責任となります。必要な知識を持つ人材が不足すると、適切な環境設定やセキュリティ対策が行えず、外部のエンジニアに依頼することになり、結果としてコストが増大することもあります。

5. 既存システムとの適合性

クラウドネイティブへの移行では、既存のシステムをそのまま適用するのではなく、新しい仕組みへの適合が求められます。そのため、既存のアーキテクチャやビジネスプロセスとの整合性を維持しつつ、新たなクラウドネイティブの特性を活かした設計変更が必要です。このプロセスは簡単ではなく、計画的かつ戦略的な取り組みが求められます。

これらの注意点を踏まえ、クラウドネイティブアーキテクチャを導入する際には、適切な準備と管理、そして十分な専門知識を持つ人材の確保が重要です。システム全体の見直しやセキュリティ対策の強化、継続的な人材育成を通じて、クラウドネイティブの利点を最大限に引き出すことが可能となります。

クラウドネイティブ実践プラクティス

クラウドネイティブアーキテクチャを効果的に活用するためには、以下のような実践プラクティスが重要です。これらのプラクティスは、クラウド環境での開発や運用の効率化、信頼性の向上を目指します。

1. 継続的インテグレーション(CI)と継続的デリバリー(CD)

継続的インテグレーション(CI)は開発者が頻繁にコード変更を統合するプラクティスであり、変更ごとに自動テストが実行されます。これにより、問題の早期発見と修正が可能となり、開発の効率が向上します。

継続的デリバリー(CD)は、CIで統合されたコードを本番環境に自動的にデプロイするプロセスです。マイクロサービスの変更がいつでもデプロイ可能な状態であることを保証し、新機能の導入やバグ修正のリスクを軽減します。CIとCDの組み合わせにより、迅速かつ信頼性の高いソフトウェアのリリースが実現されます。

2. DevOps

DevOpsは開発チームと運用チームの協力を促進する文化およびプラクティスです。クラウドネイティブ開発において、DevOpsの導入により、開発からデプロイまでのライフサイクルがスピードアップし、自動化が進むことで効率化が図られます。これにより、開発と運用の一体化が進み、ソフトウェア配信の継続的な改善が可能となります。

3. サーバーレスコンピューティング

サーバーレスでは、クラウドプロバイダーが基盤のインフラを管理し、アプリケーションはイベント駆動で実行されます。アプリケーションのスケーリングや設定は自動で行われ、実行中のリソースのみに課金されます。これにより、インフラ管理の負担を軽減し、コスト効率の高い運用が可能となります。

4. コンテナ化

コンテナはアプリケーションの動作環境を仮想的に構築する技術であり、クラウドネイティブの基盤となる要素です。コンテナにより、アプリケーションの移植性とスケーラビリティが向上し、効率的なリソース利用が可能になります。

5. コンテナオーケストレーションとアプリケーション定義

Kubernetesなどのツールを使用して、コンテナのデプロイ、スケーリング、管理を自動化します。オーケストレーションにより、複数のコンテナから成るアプリケーションの効率的な運用が可能になります。

6. 可観測性と分析

システムの動作状況を可視化するためのモニタリング、ログ管理、トレースツールが重要です。これにより、パフォーマンスのボトルネックや障害の原因を迅速に特定し、問題解決を支援します。

7. サービスプロキシ、ディスカバリ、メッシュ

マイクロサービス間の通信を管理し、トラフィック制御、セキュリティ、監視を簡素化します。サービスメッシュを使用することで、分散システム全体の信頼性と可用性が向上します。

8. 分散データベースと分散ストレージ

クラウドネイティブアプリケーションでは、データも分散管理されることが多く、冗長性とスケーラビリティが重要です。これにより、データの耐障害性とパフォーマンスが向上します。

9. ストリーミングとメッセージング

データのリアルタイム処理やサービス間の非同期通信をサポートするために、Kafkaなどのメッセージングプラットフォームが利用されます。これにより、システム全体の反応性とスループットが向上します。

10. ソフトウェアディストリビューションとコンテナレジストリ

コンテナイメージやパッケージの管理と配布を行うための仕組みです。これにより、アプリケーションのデプロイが効率化され、一貫性が保たれます。

これらのプラクティスを活用することで、クラウドネイティブアーキテクチャの利点を最大限に引き出し、システムのスケーラビリティ、効率性、そして信頼性を高めることができます。

まとめ

クラウドの利点を最大限に活用し、かかるコストやリスクを最小限に抑えながらも、マイクロサービス化やアジャイルな開発を容易にし、VUCAなビジネス環境へ適応していく素地となるクラウドネイティブ。

市場や社会に与えるインパクトの大きいエンタープライズ企業においては、もはやただ実践するだけではなく、効果を最大化するためのさらなる取り組みが求められていると言えます。

クラウドネイティブの領域で絶えず起こる技術革新をキャッチアップし、つねに最適解を提案しつづけていく。

クリエーションラインはクラウドネイティブの中核的な技術であるKubernetesの各種支援をはじめ多様なサービスや、拡張性が高く柔軟なアプリケーションの構築・運用を目指し、課題やプロジェクトの状況に合わせた適切な支援を提供しています。

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