Scrum.orgのPSK:Professional Scrum with Kanbanを受けてきたお話 #agile
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2022年6月に、Scrum.orgの認定試験の一つである PSK : Professional Scrum with Kanban を受けてきました。今回の記事では、PSKを受けようと思った背景や、実際に学んだことを紹介します。
なお、ここでは試験そのものの紹介よりも、私が何を思ったか・何を学んだかをメインでお伝えします。試験内容については、公式サイトなどを参照すれば分かるので、それよりは個人の考えや学んだことに焦点を当てる方が独自性が出て、読んで面白そうと思っているからです。
目次
PSK:Professional Scrum with Kanbanの概要
PSK(Professional Scrum with Kanban)とは、価値を創造・測定・提供するために、スクラムチームがカンバンをどう活用できるかを紹介した認定資格です。スクラム or カンバンという二者択一ではなく、スクラムが大事にしている価値やプラクティスをより一層強化できるようになります。
試験を受けようと思った背景
コラボレーションを強化する施策として、カンバンを上手く取り入れられるようになりたい
なぜPSKを取得しようとしたかという背景は、大きく2点あります。1点目は、以前からカンバンをもっと深く理解して、上手く扱えるようになりたいなと考えていたからでした。
カンバンを学習し始めたころに、5分で理解するリーンな「かんばん」 を見ました。この漫画で説明されているように、カンバンの概念をうまく導入できるとコラボレーションを強化でき、結果として相互フォローが誘発できるチームになると素敵だなと考えたのです。
Scrum.orgが大切にしているカンバンやスクラムの価値を改めて理解したい
2点目は、試験を通じてScrum.orgが大切にしている価値を改めて理解したいというのがありました。
Scrum.orgの認定資格とその試験は、よくできていると感じてます。単語や問題を丸暗記するだけではなく、「そもそも、スクラムが何を大事にしているのか」などを設問によって何度も考えることになります。また、普段の業務の中では、スクラムが大事にしている価値を忘れてしまうこともあるのですが、そういった気持ちを再度思い出すきっかけにもできます。
こちらの理由については、同じくScrum.orgから提供されているPAL-EBM(Evidence-Based Management)を以前受講したときにも感じました。そのときの資料も参照ください。
試験について
試験にあたっては、参考資料を何度も読みました。私が読んだ資料(の一部)は、下記です。
- スクラムチームのためのカンバンガイド
- Scrum.orgが提供している資料。まずはここから。
- カンバンガイド
- PSKに限った話ではないが、上記の資料と用語も大体合わせてあるので、補足ドキュメントとして利用可能。
- その他、カンバンについての書籍や資料で復習
合わせて、無料で試験範囲の一部を確認できるOpen Assessmentがあるので、繰り返し受けました。安定して全問正解できるまで1週間程度、1日1,2回受けていました。
なお、無料のAssessmentで気づけてよかったのですが、Google翻訳を使う際に気をつけておきたいポイントがありました。"leading indicator"が"先行指標"ではなく"主要な指標"と訳されることがあります。
例えば、「サイクルタイムは先行指標である」という問題に対する回答は「誤り」です。ただ、この中で、「主要な指標」と訳するとよく分からなくなってしまいますね。上記の参考資料中では、基本的な指標として挙げられていますので、それを持って「主要な指標」と捉えても間違いではない。まあ、Google翻訳を過信しすぎないようにして、怪しいと思ったら原文を確認しましょう。
試験は、45問/60分で、85%以上の正解で合格です。思いのほか時間を使いますし、集中力も使うので、そのつもりで望みましょう。
試験を通じて学んだこと
「ワークフロー」の範囲:スプリントの内側に閉じるか/外側まで含めるか
認定資格を取得することだけをゴールにするのはもったいなく、資格取得を通じて学んだことと、それを業務に活かしていくことが大切だと考えています。今回学んだことの一つは、「スクラムチームで対象とするワークフローの範囲をどこまでとするか」を選択できるということです。
- a. スプリントの内側に閉じる
- b. スプリントの外側まで含める
aは、要するにスプリントバックログに対して、カンバンを適用することを意味しています。SCRUMMASTER THE BOOKでの定義を借りれば、「#スクラムマスター道 レベル1-私のチーム」に相当すると考えます。
この場合、デイリースクラムでWIP(進行中の作業)に対して、検査と適応を行っていくのは想像しやすいと思います。また、スプリントレトロスペクティブでは、カンバンでの指標をもとに改善を重ねていくこともできますね。
また、bではスクラムチーム外との関係も含めて、ワークフローの改善を考えていくことになります。「#スクラムマスター道 レベル2-関係性」ですね。
なお、この場合でも、スクラムチームの外からワークフローの定義の方法を示したりはできません。あくまで、スクラムなので、スクラムチームが自己管理的に行うものとなります。
今までも無意識に使い分けてたところはありますが、改めて言語化された形式知でインプットしたことによって、今後はより適切な形で活用していけそうだなと思ってます。
累積フロー図の再学習
その他、この機会に改めて学びなおしたものに、累積フロー図があります。以前はうまく理解しきれていなかったのですが、今回改めて色々な資料を見直してみたら、少しだけ深く理解できました。
一番理解の助けになったのは、先程参考資料として紹介したかんばんとスクラムです。資料から、累積フロー図と関連する文章を引用します。
横方向の矢印は、4 日目に backlog に追加したアイテムが Production に到達するまで平均 6 日かかった事を示している。その半分の時間はテストに費やしている。テストとバックログに WIP の制限をすることで、かなりトータルのリードタイムを減らせることが分かる。
これは、「リトルの法則から、サイクルタイムとWIPの関係に着目する」と言えそうです。スクラムチームのためのカンバンガイド中のリトルの法則の節でも、下記のように説明されています。
流れの理論を統制する重要な教えに「リトルの法則」がある。これは、以下の関係性を成⽴させるガイドラインである。
サイクルタイムの平均 = WIPの平均 / スループットの平均
(中略)
サイクルタイムが⻑すぎる場合、スクラムチームが最初に検討すべきアクションは、WIPを減らすことである。カンバンのその他の要素は、WIPとサイクルタイムの関係性の上に成り⽴っている。
今まで、累積フロー図やリトルの法則の使い所がぴんときていなかったのですが、今度試してみようぐらいまでは理解できました。あとは実践した結果からの学びですね。
今回は、PSKを受けようと思った背景や実際に学んだことを中心に、PSK認定試験を受けたときの体験談を紹介しました。
PSKに限らず、認定試験を通じて、Scrum.orgが大切にしている価値を改めて理解することができます。また、無料のAssessmentは楽しく理解を深めるのにも最適ですので、興味を惹かれた方はOpen Assessmentのページから気軽にお試しください。