グラフを活用して金融詐欺に対抗 #neo4j #インタビュー #グラフ #金融詐欺
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Neo4j ウェバー氏 × TODO1 オスナ博士 対談
本ブログは 「Neo4j」 社の技術ブログで2022年1月13日に公開された「 Jim Webber with Dr. Edgar Osuna: Using Graphs to Take Down Fraudsters 」の日本語翻訳です。
昨年開催されたNODES(Neo4J Online Developer Expo and Summit)カンファレンスの最後を飾ったのは、Neo4jのチーフサイエンティスト兼CTOであるジム・ウェバー氏による、Neo4jユーザーやコミュニティメンバーへのインタビューでした。インタビューに答えてくださったのは、リスクモデリングサイエンティスト、シビックテック従事者、ソフトウェアエンジニアなどの方々です。
最後のインタビューでは、エドガー・オスナ博士を迎え、TODO1社がどのようにグラフ技術を活用して、リアルタイム金融犯罪の犯人を特定しているのかを伺いました。オスナ博士はマサチューセッツ工科大学(MIT)で博士号を取得され、現在は TODO1社のチーフ・データ&アナリティクス・オフィサーです。
それではお二人の対談をお楽しみください。
エドガー・オスナ博士のご紹介
ウェバー氏:NODES 2021の最後のゲストを紹介できることを大変うれしく思います。私の友人で、MITで博士号を取得された、エドガー・オスナ博士です。
オスナ博士:よろしくお願いします。
ウェバー氏:実は今、少し妙な気分です。なぜかというと、普段、博士は私なんですよ。「The Doctor」と書かれたNeo4jパーカーも持っていましたし。ですが、私の母校のニューカッスルも、MITには負ける気がします。この場ではオスナ博士が博士ということですね?(笑)
オスナ博士:正直なところ、普段は博士ということをあまり重要視していなくて、LinkedInにも書いていません。肩書きより、過去に学んだことや、一人ひとりが持っている多様な意見や経験の方が重要だと思っているので。とはいえ素敵な紹介をありがとうございます。
ウェバー氏:それでは、オスナ博士の研究について少し聞かせてください。オスナ博士は長い間オペレーションズ・リサーチに携わっていて、それが現在のTODO1社でのチーフ・データ&アナリティクス・オフィサーという役割につながりました。ですが、私が初めて読んだオスナ博士の学術論文は、サポートベクターマシンに関するものでした。サポートベクターマシンを覚えていますか?
オスナ博士:もちろん覚えていますよ。当時はベル研究所がサポートベクターマシンの技術を開発し始めている最中で、ちょうどその時にMITでその研究ができたのはわくわくしましたね。サポートベクターマシンを開発し、その後大きく発展させたウラジミール・ヴァプニク博士が同研究所にいたころです。同研究所がまさに技術の最先端を担っていた時代でした。私がたまたまその時、その場所にいて、後に主流となる技術に小さな砂粒くらいの貢献ができたことに感激しましたね。
ウェバー氏:相変わらず謙虚で素晴らしいですね。さて、オスナ博士がサポートベクターマシンに熱中し、夢にあふれていた学生時代から、月日は流れ、状況も変わっています。今はTODO1社でチーフ・データ&アナリティクス・オフィサーを務めていますね。データとアナリティクスの最高責任者だということはわかりましたが、TODO1社とはどんな会社ですか?
TODO1社のNeo4j活用について
オスナ博士:TODO1は20年以上前に設立された会社です。世間からはテック企業として見られることが多いのですが、私たちは銀行のビジネスパートナーだと思っています。主に2つの分野で、テクノロジーを活用して銀行の業績を支えています。その2つの分野の1つ目は、デジタルチャネルです。銀行業界のネットバンキングアプリの大半は、私たちが運用しています。このコロナの時代に、これはかなりの重責です。
それに連動しているのが2つ目の分野、セキュリティです。お客様には、銀行のアプリなどのデジタルチャネルを信頼していただき、自分の財産が守られていることを実感していただきたいですよね。その一方で、世の中には悪意を持つ人間も存在します。お金を奪い取ろうとする人は、アプリを介すことで銀行との間にできた物理的な距離を悪用しようとします。昔は、銃を持って銀行に乗り込まなければならなかったのに、今では、どこからでも、自分の身を危険にさらすことなく、銀行強盗ができてしまうのです。TODO1では、この2つの要素を組み合わせて、銀行の業績向上に貢献しています。
ウェバー氏:なるほど、素晴らしいですね。たしかに、サイバー銀行強盗の方が、一見平和に思えますね。しかし、実際の銀行に押し入って窓口で銃を突きつけたりするより、デジタルでやったほうが、不正行為の規模ははるかに大きいでしょうね。
オスナ博士:そうですね、彼らはかなり急速に進化しています。銃を持って乗り込んでいた時は、失敗した場合のリスクは大変大きいものでした。しかしサイバー金融詐欺では、一度だけ成功させれば良いのです。失敗しても捕まらず、もう一度トライするだけなので。
サイバー攻撃は進化しつづけています。私たちがチーフ・データ・オフィサーやアナリティクス担当者を抱えているように、金融詐欺集団側も新しい技術を研究する人間がいて、日に日に攻撃がより高度になっていくのです。特に最近は、リアルタイムに決済が行われるようになってきているので、今まで以上に危険になっていると思います。利用者の立場としては、支払いは速くしたいですよね。銀行業界は今、より速い支払いをお客様に要求されています。でも、一度お金が口座から出ていくと、それを止めるのはより難しくなります。バッチ処理が主流だった以前とは違うのです。このように、様々なことが変化していて、その変化に対応していくのが私たちの課題です。
ウェバー氏:なるほど。どこかにオスナ博士の悪人版がいると思うと、興味深いですね。相手はその頭脳を、どうやってシステムを不正利用できるかに使っていて、オスナ博士と軍備競争をしているわけですね。それでは、どのようにしてグラフにたどり着いたのか、それから、TODO1社でどのようにグラフを活用しているのかについて教えてください。
グラフで不正検知および不正防止を実現
オスナ博士:TODO1では不正検知および不正防止のシステムを刷新しようとしていました。ナレッジや特徴を表現したり、特にリアルタイムで計算することを考えると、従来のデータベースでは表現し切れないな、と思いました。考えてみれば、ホワイトボードで不正のパターンや不正行為を描き出すとき、ノードと矢印を使うわけで、それはつまりグラフなのです。だとすると、実際の現象を表現できているわけでもないのに、なぜテーブルだけでやろうとするのか?では従来のデータベースを忠実に使い続けてきた私たちが、その壁を破り、グラフという別のパラダイムを使い始めるにはどうすればいいのか。特にリアルタイムシステムの場合はどうすればいいのか。そのような課題がありました。
ウェバー氏:なるほど、先ほどJulie Fisherさんとのインタビューで、ほとんど同じことを伺いました。Fisherさんは、スプレッドシートのデータの中からつながりを見出すことができて、そこからグラフにつながっていったそうです。オスナ博士も似たような道を辿ってこられたのですね。パターンをリレーショナル・データベースなどで表現するのは難しい、と気付いて。
リアルタイム性の側面についても詳しく教えてください。私が今ユーザとして使っているシステムだと、ある口座から他の口座に数時間でお金を送ることができるのですが、オスナ博士が意図しているリアルタイム性というのはもっとレイテンシが小さいものになるのでしょうか?
オスナ博士:そうですね。弊社がサービスを提供しているラテンアメリカの多くの銀行では、リアルタイムの決済システムを使っています。つまり、トランザクションをクリックすると、その瞬間、お金は消えてしまうのです。先日、タクシーの運転手さんに決済システムの自慢をされましてね、彼はQR決済システムを利用していたんですけど、「見てくれ。こうするだけで、一瞬で僕の口座にお金が振り込まれるんだ」と嬉しそうに話していましたね。
彼の体感的にも本当に一瞬だったわけです。ユーザーエクスペリエンスの観点からすると、我々が決済を分析するのに数秒もかけることはできないのです。ということは、分析する時間を1秒以内に抑えて、カスタマージャーニー全体に影響を与えないようにしないといけないのです。すべての取引が私たちのエンジンを経由するんですが、そこをお客さまには認識させず、遅延も感じないようにしなければならないのです。全行程を、0.5秒以下で行わなければいけないのです。
ウェバー氏:なるほど。今おっしゃったことを整理しますと、物理的距離がとても離れている人同士でも、体感としても一瞬で完了する支払いができるということでしょうか?しかも、そのワークフローの一環として、かなり高度な不正チェックを行っているということでしょうか?
現代の銀行業務におけるリアルタイム・トランザクション
オスナ博士:そうです。そのような高度なチェックでNeo4jが大活躍してくれています。銀行が持っている生体認証情報や、顧客の行動範囲や行動パターンなどのナレッジが蓄積されており、今この瞬間もリアルタイムで保存され続けています。そして保存された情報は、本人確認の判定に使用されます。この情報をもとに、ユーザにワンタイムパスワードを要求するのか、そのまま取引を続行させるのかを判断します。あるいは、本人ではないと確実に判断できる場合は、取引を拒否することもできます。
当然、(本人なのに拒否されたりしたら、)満足度への影響がものすごく大きいですよね。いまの時代、顧客満足度は大変重要になっています。時間がかかりすぎたり、拒否しすぎてしまうと、サービスが悪いとなり、ツイッターの投稿1つで悪評を立てられ炎上してしまいます。ですから、ユーザーエクスペリエンスという面で、セキュリティチェックのスピードが重要な要素になるのです。
ウェバー氏:そうなんですね!?トランザクションが1〜2秒長くかかるだけで、急にカスタマーサービスの品質が悪い、となってしまうんですね。厳しいですね。
オスナ博士:2秒もかかったら、品質が悪いどころか、間違いなくタイムアウトしてしまいますね。ですから、迅速に、そして、スケーラブルな形で実現しなければいけないのです。何しろ、真夜中と昼間では、処理件数がまったく違いますからね。給料日にも当然、支払いが増えますし。クリスマスなどのイベントごとの時にも跳ね上がりますよね。
Neo4jを選んだ決め手の一つが、このような状況に耐えられる柔軟性だけでなく、レジリエンス(回復力)も備えていたからです。パブリッククラウドで運用しているため、障害は避けられないのですが、そう言った問題が発生した場合でも、システムを止めるわけにはいかないのです。実際にそのような問題が発生したときにも、Neo4jは完璧なパフォーマンスを発揮してくれました。私たちがイメージしていた通りに、すべてがしっかり動作し、お客様へのサービスに影響を与えることなく復旧できました。
ウェバー氏:そうですか、それは良かったです。Neo4jをつまらなくするのが私の野望です。グラフのことを考えるとワクワクしますが、機械の操作はできる限り、退屈である(つまり、安定している)べきだと思うんです。
ちょっと話題を変えますが、他のインタビューでは、主にコミュニティメンバーの観点から話を聞いてきました。ですが、TODO1社はNeo4jの商用ユーザーなので、その点では少し違いますよね。コミュニティに参加しながらも、商用ユーザーとしてNeo4jを利用するのはどんな感じですか。
ワンチーム・ワンコミュニティの精神
オスナ博士:購入を検討していた段階から、かなりスムーズだったと思います。営業のプロセスは、私たちがNeo4jに満足することを何よりも優先してくれていると感じました。私たちが満足して初めて契約の話をし始めました。セールスエンジニアのDave(姓:Richard、セールス、SE)さんとAlex(姓:Rivilis、セールスエンジニア、SE)さんは、私たちが何を必要としているのかをしっかり理解し、すべてをうまく連携させていくことを一番に考えてくれました。
購入後はもちろん、製品が正常に動作することが重要ですし、アフターフォローもしっかりとした対応が必要だと思います。加えて、こういう技術は常に進化しているので、プロジェクトも終わりがないのです。そこで、Rodrigo(姓:Haces、カスタマー・サービス・アーキテクト)さんとSusan(姓:DiFranco、カスタマー・サクセス・マネージャー)さんが私たちの状況を継続的に把握してくれ、専門知識を提供して、必要なリソースは何か、などを常に考えてくれています。
あと、もう一つ私たちにとって重要だったのは、CMS(クラウド・マネージド・サービス)ですね。24時間年中無休なサービスを運用していても、心配せずに夜ぐっすり眠れているのは、CMSのスタッフが私たちのクラスターや環境を運用・管理、それから品質保証までしてくれているからです。私たちのように、スピードが鍵になるサービスを運用している方は、運用をCMSに任せると良いかもしれません。ちょっとクサい言い方をすると、我々がお客様の成功に寄与できるように、AlexさんやDaveさんのような方々、それからCMSのスタッフと、ワンチームでサポートしていただいているのだと思います。
ウェバー氏:そう言ってくださって本当に嬉しいです。個人的には、Neo4jの良さの一つが、この素晴らしいコミュニティだと思うのです。そしてNeo4jの中の人たちも、同じようにそのコミュニティの一員であり、本当にいい人たちばかりなのです。DaveとAlexの話が出ましたが、僕も良く知っていて、本当にコミュニティを大切にしています。たまたまNeo4jの社員であるだけで、コミュニティの一員として、他のコミュニティメンバーを助けようという思いがあるのです。SusanとRodrigoも同様に、Neo4jコミュニティのメンバーとして、常に味方になってくれる人たちです。
オスナ博士:彼らを私のチームの一員だと思っています。「この会社の人たちは私たちの味方だ」と顧客が感じられる時に、成功につながるのだと思います。私たちも自分のお客様にはそう感じてほしいですし。相互の信頼関係の上に成り立つビジネス関係こそが、長続きするものですからね。ノルマをこなすことだけを考えていてはできないことです。
ウェバー氏:そうですね。このカンファレンスに参加されている方の多くは、Neo4jのコミュニティサイドしか知らないと思うので、Neo4jの商用サイドがコミュニティサイドと非常によく似た運用をしているということを、実際の顧客から聞くことができて本当に良かったです。本当に頑張っている人がたくさんいて、大変嬉しいことです。Dave、Alex、Susan、Rodrigo、James(姓:Freeman、CMSリーダー)も視聴していると良いのですが。
それでは最後に、少し大枠の話をしてみたいと思います。オスナ博士と私は以前から交流があるのですが、オスナ博士が先日おっしゃっていたことがとても印象に残っています。それは、「新興国、つまりグローバル・サウスは、グローバル・ノースにいるプレーヤーに対して競争優位性を持っている。」というお話です。この主張だけを聞くと疑問を持つ方が多いと思います。しかし、技術や資本レベルなど、非常に説得力のある説明をしていただきました。この点について、少し詳しくお話いただけますか?とても興味深いと思います。
オスナ博士による業界洞察
オスナ博士:ええ、とても深い議論だと思うので、2つほどヒントを挙げますね。ソフトウェア産業やテクノロジー分野の一部について考えてみると、それらは資本集約的ではありません。先進国でない国でも積極的に参加できる分野があり、資本集約的な活動と比べて障壁はそれほど顕著ではありません。また、そのような新興国は教育への投資が盛んです。例えば TODO1社にもコロンビアからの優秀な人材がおり、彼らは世界の他の地域の人材と同等、あるいはそれ以上のレベルです。そして、成果に対するコミットメントも非常に高い。彼らは、1社で半年働いた後、より高い給与のところに転職しようとは考えていないのです。
つまり、産業のある部分を発展させるのに適した条件があるわけです。また、多くの場合、人件費が抑えられるアドバンテージもかなりあります。競争優位性の要素が複数ある状態です。最近ではシリコンバレーもこの点に注目し始めているようで、市場が加熱しつつありますが。
もうひとつ、こうしたエリアの特徴として、たとえば先ほど話した決済に関わる業界では、お客様はリアルタイム決済に慣れています。NAFTA方式、NACHA方式、あるいはFed方式のような、1日に3~4回ウィンドウがあるようなバッチ決済には抵抗があるのです。そのため、新興国の人材は先進的な枠組みで思考し業務を行っています。ですから、別の市場、例えば米国に参入する際にはある分野では私たちが十分に先行していると言えるでしょう。
ウェバー氏:たしかにその通りですね。ある意味、メインフレーム時代やリレーショナルDB時代を完全にスキップして、ビジネスを前進させる最新のテクノロジー・ツールを選ぶことができるのですね。
オスナ博士:ええ、私たちの場合それが鍵でしたね。
私は2年前にTODO1に入社しましたが、先ほども言ったように、この会社は20年以上続いているのです。経営陣全員が20年以上にわたって銀行業務に携わっています。つまり、繰り返しになりますが、私たちはビットやバイトを売っているテクノロジー企業ではありません。私たちは、銀行がどのように機能しているか、技術面だけでなくビジネス面でも理解しています。そして、そのようなユースケースこそが、お客様に付加価値を与えることができるものだと考えています。
ウェバー氏:それは素晴らしいことですね。時間を割いていただいて本当にありがとうございました。
オスナ博士:お話できて良かったです。できれば年内に直接お会いしたいですね。
ウェバー氏:そう願っています。何年も前に約束した冷たいビールの借りがまだ残っています。必ず約束は果たしますよ。ビールの支払いがリアルタイムにできないのが残念です(笑)。
オスナ博士:お招きありがとうございました。
Neo4jは、グラフデータベース技術をリードする存在であり、世界で最も広く導入されているグラフデータベースとして、Comcast、NASA、UBS、Volvo Cars などのグローバル企業で、人、プロセス、システムがどのように関連しているかを明らかにし、予測するのに役立っています。
Neo4jで構築されたアプリケーションは、関係性優先のアプローチを用いてデータ分析や人工知能、不正行為の検出、リアルタイムの推奨、ナレッジグラフなどのつながりのあるデータの課題に取り組んでいます。 詳細はneo4j.comをご覧ください。
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