PowerApps で名刺管理アプリを作ってみる(1) #azure #powerapps
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前回 までは、テンプレートからアプリを作成し、その仕組みを簡単に確認した。本稿からは、テンプレートを使用せずにゼロからアプリを作成してみようと思う。
作成するアプリの概要
ここでは、名刺のデータ(会社名、名前など)を登録、閲覧できる シンプルな CRUD アプリを作成する。具体的には、以下の機能を実装する。
- 名刺データを登録、更新、削除できる。
- 名刺データをリスト表示し、特定の名刺を選択すれば、その詳細が表示される。
- 名刺データの編集後は、Slack へ通知されるようにする。
名刺データを管理するデータソースには、PowerApps の Common Data Service (CDS) を使用する。Common Data Service は、PowerApps 内で作成できるデータベースである。有償ではあるものの、PowerApps アプリのデータ管理場所として手軽に利用できる。
作成するエンティティ(テーブル)は、以下のフィールド構成とする。
表示名 | 名前 | 種類 | プロパティ |
---|---|---|---|
プライマリ ID | PrimaryId | オートナンバー | 一意(主キー) |
会社名 | CompanyName | テキスト | 必須, 検索可能, 最大長128 |
名前 | Name | テキスト | 必須, 検索可能, 最大長128 |
電話番号 | Tel | 電話 | 検索可能 |
メールアドレス | メール | 検索可能 | |
URL | URL | Web サイト URL |
環境
データベースを作成する前に、まずは "環境" を作成する必要がある。環境とは、簡単にまとめると以下のようなものである。詳細については、こちら のページを参照していただきたい。
- アプリ、フロー、データベースを管理するグループであり、有償プラン 2 でのみ作成できる。(フリートライアル中は、プラン 2 相当になるので作成可能)
- CDS のデータベースは、環境ごとに 1 つだけ作成できる。
- 同じ組織に属するユーザーに対して、環境ごとにアプリやデータベース接続などのアクセス権を設定できる。
- 環境はユーザーごとに 5 つまで作成可能で、作成した環境は現状では削除できない。
PowerApps にサインインした直後は、デフォルトで用意されている環境を使用する状態になっている。この環境ではデータベースを作成できないので、まずは新しい環境を作成する。
環境の作成
まずは、Web ブラウザから https://web.powerapps.com/ を開いて、PowerApps にサインインする。サインイン後、 をクリックし、[管理センター] をクリックする。
管理センターが表示されるので、[新しい環境] をクリックする。
環境名は任意で良いが、ここでは "My Environment" とする。他の設定はデフォルトのままで、[環境を作成する] をクリックする。
My Environment 環境が作成される。
※データベースが作成されない場合があるので、その場合は、上記画面から My Environment をクリック → [データベース] をクリックで表示される画面から作成できる。
作成した環境へ切り替え
作成後、PowerApps スタジオを起動し、[アカウント] をクリックする。その後、[変更] ボタンをクリックし、[My Environment] を選択後、[環境の変更] をクリックする。
これで、My Environment 環境を使用する状態に変更された。
[接続] をクリックすると、PowerApps ポータルが開くので、Web ブラウザでも環境が変更されていることを確認する。
CDS データベース
データベース作成後、PowerApps ポータルから [Common Data Service] - [エンティティ] を開くと、サンプルのエンティティが幾つか作成されていることがわかる。
エンティティの作成
今回は、このサンプルエンティティは使用せず、新しいエンティティを作成して使用する。まずは、[新しいエンティティ] をクリックする。
エンティティ名と表示名を以下のように指定し、[次へ] をクリックする。
フィールドの追加画面が表示される。プライマリ ID の他に、最終更新日などのフィールドが最初から追加されている。これらのフィールドは特に削除する必要はないので残しておき、名刺データに必要な会社名、名前、電話番号、メールアドレス、URL のフィールドを追加する。フィールドを追加するには、[フィールドの追加] をクリックする。すべてのフィールドを追加し、プロパティを設定後、[作成] をクリックする。
名刺エンティティが作成される。
サンプルデータのインポート
名刺エンティティができたが、まだデータが何もない状態なので、サンプルデータをインポートしておく。
csv:sampledata.csv
(株)AAA,ああ あああ,0a0-000-xxxx,a1@aaa.local,http://aaa.local/
(株)BBB,いい いいい,0b0-000-xxxx,b1@bbb.local,http://bbb.local/
(株)CCC,うう ううう,0c0-000-xxxx,c1@ccc.local,
(株)DDD,ええ えええ,0d0-000-xxxx,d1@ddd.local,http://ddd.local/
(株)EEE,おお おおお,0e0-000-xxxx,e1@eee.local,http://eee.local/
(株)FFF,かか かかか,0f0-000-xxxx,f1@fff.local,http://fff.local/
(株)FFF,ああ あああ,0f0-000-xxxx,f2@fff.local,http://fff.local/
(株)GGG,きき ききき,0g0-000-xxxx,g1@ggg.local,http://ggg.local/
(株)GGG,くく くくく,0g0-000-xxxx,g2@ggg.local,http://ggg.local/
(株)GGG,くく くくく,0g0-000-xxxx,g3@ggg.local,http://ggg.local/
CDS にはデータをインポートする機能が備わっているが、なぜかファイルアップロード時にエラーとなり、筆者が確認した限りではインポートできなかった。
そこで、Excel(筆者の環境では Windows 10 Pro, Excel 2016 を使用)からデータ編集できる機能を使用して、データを追加する。
まず、エンティティ一覧から [名刺] をクリックし、[Excel で開く] をクリックする。
Excel ファイルがダウンロードされるので、これを開く。保護ビューで表示された場合は、[編集を有効にする] をクリックする。
画面右側に、PowerApps Office Add-in の画面が表示されるので、サインインする。
これで、Excel と 名刺エンティティが接続された状態になるので、Excel のセル B2 に CSV データを貼り付ける。
このままでは、B 列にすべてのフィールドデータがカンマ区切りのまま収まった状態になってしまうので、適切なセルに配置されるよう、区切り文字を指定して分割する必要がある。
セル B2 から B11 が選択された状態で、[データ] の [区切り位置] をクリックする。
区切り位置指定ウィザードが表示されるので、以下の操作を行う。これで、各セルにデータが収まった状態になる。
- [カンマやタブなどの区切り文字によってフィールドごとに区切られたデータ] を指定
- [次へ] をクリック
- 区切り文字として [カンマ] を選択
- [完了] をクリック
最後に、PowerApps Office Add-in の画面から [公開] をクリックすると、Excel のデータがそのまま名刺エンティティに反映される。
PowerApps ポータルで、データを確認してみる。メールアドレスに警告が表示されているが、.local というドメインが実際には存在しないためであり、ここでは無視する。
まとめ
今回は、アプリと CDS を作成するための新しい環境と、アプリで使用する CDS の新しいエンティティを作成した。環境は作成数が限られており、また現状では削除できないため、作成する際は注意する必要があるが、ここまでの作業では特に難しいポイントはなく 行き詰まることはあまりないと思われる。(ただし、データのインポートでは少々躓いてしまったが。。。)
次回は、データの更新と同時に Slack に通知するフローを作成した後、アプリの作成にとりかかってみる。
参考文献
Environments overview
https://powerapps.microsoft.com/ja-jp/tutorials/environments-overview/
Environments administration
https://powerapps.microsoft.com/ja-jp/tutorials/environments-administration/
Open entity data in Excel
https://powerapps.microsoft.com/ja-jp/tutorials/data-platform-interactive-excel/