お客様情報
- 本社所在地
- 〒530-0001大阪市北区梅田三丁目2番2号 JPタワー大阪22階
- 設立
- 2000年10月
- 資本金
- 20 億4,200 万円(2023 年6 月末現在)
- 従業員数
- 3,335 人(内、正社員1,326 人)(2023年9月末現在)
取材当時の情報です
Introduction
・急激なビジネスと組織の成長に合わせ、社員間の交流や知識の掛け合わせが急務に
・お客様の“心強い仲間”として共通の目的達成に向けた“企画”や“仕掛け作り”に貢献
・参加者全員が効果を実感。“ビジネス書を読むよりもずっと価値があった!”との声も
「資材調達ネットワークを変革する」という企業理念を掲げ、商品調達から配送、お客さまとの接点に至るまで、インターネットを基礎としたテクノロジーとオペレーションによって間接資材の流通構造に変革を起こし、お客さまが抱える課題を解決する株式会社MonotaRO(以下、MonotaRO)。2022年の通期実績では、前年比19.1%アップの2,259億円(連結)の売り上げを達成し、現在では、2,000万点以上の取り扱い商品と約880万のユーザー数を誇る*1。急激なビジネスの成長に合わせ激増する社員の教育が重要なテーマとなっていた同社の人材組織開発部門では、シニアクラスを対象とした“業務課題探索研修”の試行においてクリエーションラインのワークショップ支援サービスを採用。計画策定から実際の運営に至る間でのサポートにより多くの効果を得た。
社員数が激増し組織が急拡大する中、ビジネス理解に貢献する研修企画が急務に
「当社は、ビジネスの急拡大もあり社員数が激増しています。私が入社した 2019 年頃から、2023 年時点で正社員の数はほぼ倍。部門の数も同様に倍近い数になりました。各社員の知識・経験・専門性を掛け合わせて、成長を遂げてきた当社にとって、組織の拡大はそれを難しくさせていきます。
そのためこれらを掛け合わせる仕掛けづくりが必要なテーマとなっていました」-同社 人材組織開発部門 人材開発グループの堀 晃輔(こうすけ)氏は、人材育成への取り組みについてこう話す。人材組織開発部門内には人事総務系のグループと人材開発グループがあり、堀氏が所属する人材開発グループは、採用、研修などを含め組織の成長を促進する取り組みを行っている。 近年、このような取り組みの一環として、堀氏のチームはグループ長やシニアクラスを対象とした研修を計画し、そのための準備を進めてきた。
しかし、その過程で懸念材料として浮上したのが、以前実施したシニア向け研修で期待したほどの効果が得られなかった経験だった。「中途・新卒に関わらず、当社ビジネスを知っていただくために入社後すぐに実施される “社内業務研修”を、シニアクラスのメンバー向けにアレンジした形で実施した試行的な研修を行いました。しかし期待したほどの効果は得られませんでした」と堀氏は回想する。
同研修は約 30 名の参加者で2 日間にわたって実施され、その中で参加者それぞれが自分の部門の仕事内容を説明し、互いに他部門の業務内容などを知り知見を深めるというものだった。「先に挙げた社内業務研修はキャリアのある中途を含むとはいえ、新入社員向けであるが故に、『知ること』に重心をおいています。つまり、正しい情報を、わかりやすく、丁寧かつ網羅的に説明することが重要になります。
一方、今回の取組みでは異なる専門性を持つメンバーが、日常の業務の中で得られた知識・経験の共有を目的としています。従って、その過程ではどうしても『そもそも課題はなにか』『なぜそういう判断となったのか』といった前提のすり合わせが重要になります。その過程を仕掛けとして組み込めていなかった。結果として、組織を超えた横の繋がりを深めるという意味では効果がありましたが、『一歩踏み込んだ議論』を展開することができませんでした。
MonotaROでは多くのファンクションを外部化せず社内に有しています。エンジニア、マーケター、データサイエンティスト、物流、商品バイヤー、営業、カスタマーサポート、コーポレート、こうした多様な専門性をそれぞれの社員が発揮し、ビジネス成長につなげることが企業としての強みです。一方で、研修となると難しさがあります。
専門性が異なる皆が一堂に会して仕事を共有する場合、本来強みであるはずの専門性がギャップとなって『共通項としての必要な学び』を得ることが難しくなったのです」(堀氏)。 このような経緯もあり、また自社内だけで新たな研修の計画を策定し実施・運営することの限界を感じた堀氏は、外部の支援を受けることを検討しはじめる。ちょうどその頃耳にしたのが、クリエーションライン株式会社(以下、クリエーションライン)が以前MonotaRO向けに実施し、大きな成功を収めた“VSMワークショップ”の話だった。
研修の計画・運営を支援する外部リソースとしてクリエーションラインを選択
MonotaROでは、自社がもつ競争優位性の1つであるサプライチェーンのバリューストリームを把握するための手法としてVSM(Value Stream Mapping)の導入を決めていた。しかしその実施・運営にあたっては、内製による限界を感じ、経験ある外部の会社に依頼した方がより効果的と判断。このような対応に長けたクリエーションラインの“VSMワークショップ”を採用して社内向けに実施した。この結果、“業務 /システムチームの共通認識の醸成”、“潜在的な課題の可視化”、“具体的なアクションの創出”といった数々の導入効果を享受することができた。堀氏は「役員から話があり、クリエーションラインのVSMワークショップによって多くの導入効果が得られたことを知りました。そこで私達人事開発グループの取り組みについてもご協力頂けないかと考えました。以前の研修が思ったほどの効果を上げなかったこともあり、よい研修を実現するための運営などについて、私達自身が経験豊富なクリエーションラインから学ぶ必要があると考えたのです」と述べている。
こうして2023 年 4 月 19 日、人材開発グループとクリエーションラインによる第一回目の打ち合わせが実施された。クリエーションラインから担当として打ち合わせに参加した、アジャイルコーチの中村知成は、その内容について「最初にお話しがあったのは、以前試行した同様の研修での結果も踏まえ、ファシリテーション等につき、外部からの支援をお願いできないかという内容でした」と振り返る。
“取り上げるべき内容”の精査、効果的な研修の実施に向けた“仕掛け作り” 等にも貢献
堀氏の側では、今回の研修の企画に先立ち2つのテーマを定義していた。「事評価で使用する項目でもある、“企画の実行”と“業務生産性の改善”という2つのテーマを研修の場で取り上げることができればと考えていました」(堀氏)。そして、この2つのテーマを異なる専門性を持つ参加者が最大限に共有し、深堀していくためにはどうすればよいのか?という点についてクリエーションラインに相談したいとの意向を伝えた。これを受け、2023年6月から7月上旬にかけて認識を合わせるため合計5回、丁寧に打ち合わせが実施された。
打ち合わせの過程でクリエーションライン側は、研修で取り上げるべき内容、今回は外した方がよい内容といった切り分けや、効果的な研修を実現するための仕掛け作りといった面でアドバイスを行った。 「堀様の方から提示頂いた研修のゴールに関するプランついて、『それは本当に実現できるものですか?』といった質問を交えながら、今回は実現が難しいため外すことを提案したプランもありました。
例えば、研修後に各部門に持ち帰って実施し、変化を起こすような“ネクスト・アクション”を考えるというプランは、今回の研修内容から外させて頂きました。参加者の自部門内での権限範囲・決定権などを考えると、実際に現場に持ち帰ってもアクションを取ることが困難な場合があると考えたからです」(中村)。
堀氏も「決定権に加え、部門ごとに業務の専門性が高いため、研修の場で討議しながら考えた内容を現場に反映することは、現実的に難しいと判断しました」と補足する。 また、参加者が自分の考えをまとめる際、また全員で話し合う際に有効な仕掛けについてもアイディアがあげられた。
「こんなフォーマットを用意すれば、参加者が自らの考えをメモしたり、発言したりしやすくなるといった提案や、話し合う際に疑問・質問が活発に出るような仕掛けについても、具体的にシミュレーションしながらお話しました」(中村)。「討議を活性化するためには、お互いの考えを“見える化”することが重要だというアドバイスを頂き、そのための仕組みとして、付箋によるメモを全員が見える場所に貼ったり、テーブルにイーゼルパット*2を置いたりするなどの細かな対応を決めていきました」(堀氏)。
これらの検討を重ね、最終的に研修の実施方向性が決定された。「“会社の取り組みのアップデート”、“自組織の学びの棚卸と、他部門からの学びの獲得”、そして“社員間の横の繋がりの構築”という、元々想定していた3つの目的を最大限実現するためのデザインを盛り込み、研修実施につなげることができました」と堀氏は話す。
新たな施策が盛り込まれたシニアクラス向けのワークショップ、“業務課題探索研修”は、2023年7月13日~14日に実施された。
*2 イーゼルパッド:模造紙のように書き込める大きなサイズの付箋
2グループで各6セッションを実施。常に“見える化”を行い各ステップの最後では“学びの棚卸”も
2日間にわたって実施された研修には12名が参加。6名ずつ2つのテーブルに分かれ、各テーブルには社内の各セクションからのメンバーとして、物流、サプライチェーン、商品のバイヤー、エンジニア、マーケター、営業等の担当者が着席した。また、クリエーションラインからは、中村と伊藤いづみが参加。両名ともアジャイルやスクラムにおけるファシリテータとして長い経験を持っている。
1日目は“企画の実行”というテーマで、2日目は“業務生産性の改善”というテーマでそれぞれ午前中に3セッション、午後に3セッションの計6セッションが実施された。「セッションは60分間となっており、そこで各自が発表を行い、質問を受けます。そして最後に、クリエーションラインの方にファシリテーションに入って頂き、『それは具体的にどういうこと?』といった深堀した質問を引き出してもらいながら、発表内容に関して理解を深めていきました」(堀氏)。
また、午前、午後の終わりに、それまでの3セッションで得られた学びについて棚卸を実施。早い段階で棚卸をすることで理解を深めた。さらに2 日目の冒頭で1 日目の学びは何だったのか、2 日目の最後に全体を通じてどんな学びがあったのかという点を再確認するステップを設けた。以前の試行と同様に、2日間という限られた時間で実施された研修だったが、その実施結果には明らかな違いが見られた。
導入効果:参加者全員が効果を実感。“ビジネス書を読むよりもずっと価値があった!” との声も
研修実施後のアンケートでは、参加者 12 名全員が「効果があった」と回答。コメントとしては「共有資料等によって社内の最新動向は把握できるが、その背景やプロセス部分については、今回の研修を通じて深く学べた」、「自部門だけではなく、他部門それぞれで多くの改善活動が行われていることを知り、会社の取り組みへの理解が深まった」などの内容がフィードバックされた。
さらに、今回の研修の効果を最も象徴するものとして、堀氏は「営業担当者から『この研修は、ビジネス書を読むよりもずっと価値があった!』というフィードバックを頂きました。この方はマーケティング担当のセッションを聞いて、その内容から共通項を見出し、自分の業務にも活かせるという気づきを得たようです」と付け加えた。
また運営側の立場でも、今回の研修実施による効果を実感することができた。堀氏は、事前に検討した上で取り入れた様々な仕掛けが有効となった件に触れ「クリエーションラインからのアドバイスによってプレゼンテーションの質も向上したと感じています。セッションでの発表にあたっては、事例などをそのまま紹介しても他の業務セクションの方には伝わり辛いため、抽象化して、例えば “この2つが最重要ポイントです”という形で学びを伝えるといった点や、セッション内容が“刺さる方は誰か?”を想定しながら発表を行うといった点が参考になりました」(堀氏)と強調した。 中村も「幾つかの仕掛けでセッションの効果を高めました。
例えば、1 日目の冒頭で『理想的な状態とその状態に至るまでの課題とは何かということを思い浮かべてください』と話し、これを意識しながら他者の発表を聞くよう促しました。これにより他部門の発表内容からの学びがより深まったと考えています。また、質問や疑問については、自分の手元にメモするのではなくて、全員が見える場所に付箋を貼るなどして、徹底的に“見える化”することで、コミュニケーションの活性化に努めました」と振り返る。
効果に関わる話の最後で、堀氏は “過去内製でトライしたものと比べると圧倒的に良いものになった” との発言を皮切りに、クリエーションラインの貢献について触れ「今回は、当初お願いをしたファシリテーションという役割よりも、むしろ企画におけるフレーム作りや仕組み作りに大きく貢献して頂いたと感じています。クリエーションラインのお二人は、同様の多くの場を経験されているため、上手く言語化できないような内容についても十分把握された上で、スムーズな意思疎通を図って頂きました。一緒に企画・運営に携わって頂いた中で、ちょっと失礼かもしれませんが “本当に心強い仲間”という感じが強まりました」と締めくくった。
今後の展望:入社3年以上のシニア職180名を対象に研修を継続展開
今回の研修は、新たな施策を数多く盛り込んだトライアル的な要素もあったが、この成功を受け人材開発グループでは、この12月に24名の参加者を募って同様の研修を実施することを決定した。 堀氏は「入社3年以上のシニア職の方は増加の一途を辿っています。これらの方々を対象に、今回のフレームやファシリテーションを参考にしながら研修を実施していく予定となっています。
現段階での参加対象候補者は180人におよんでいます」と今後の期待を話す。なお次回以降の実施にあたっては、人材開発グループが主体となり、自立した形でこれらの企画・運営を進めていく予定だ。 クリエーションラインの参画によって大きく進化したシニア教育の施策は、MonotaROの中で確かに芽吹き、今後さらなる展開を迎えようとしている。