お客様情報
■ 企業概要
2000年11月設立。現在ではクラウド事業およびIT人材事業の2つの事業を展開している。クラウド事業領域では「楽楽精算」「楽楽明細」「楽楽販売」「楽楽勤怠」などの特定業務向けソリューションを「楽楽シリーズ」として展開し、また、問い合わせ管理システム「メールディーラー」、メールマーケティングサービス「配配メール」、社内向けITチャットボット「チャットディーラーAI」、クラウドCRMシステム「楽テル」などのサービスを「ラクスシリーズ」として展開。さらに、低価格クラウドサービスやデジタル人材派遣などの事業をグループで展開し、これらのソリューションを通して顧客企業の成長を後押ししている。
■ 本社所在地:
〒151-0051東京都渋谷区千駄ヶ谷5-27-5リンクスクエア新宿7階
■ 設立:
2000年11月1日
■ 資本金:
3億7,837万8千円
■ 社員数:
連結:2,197人(183)単体:1,253人(169)(カッコ内は年間平均の臨時雇用者数)※2023年3月31日時点の内容に基づく
取材当時の情報です
※写真:左から青山氏、金本氏
- 導入ハイライト
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- レガシーなシステム環境から脱却しKubernetesなどの新技術を導入
- Kubernetes基礎編の受講で機能だけでなく実運用を意識したノウハウを習得
- 組織作りの一環としての技術教育という面でも成果を得る
老舗SaaS事業者のレガシーな環境にKubernetesを芽吹かせる
「約2年前、私が入社した頃のラクスのシステム環境はかなりレガシーな状況でした。まだ仮想化されていないシステムも残っていて、市場で求められているコンテナ化やKubernetesの検討も進んでいませんでした」-ラクス 開発本部 インフラ開発部 部長の金本宏司氏は、2年前の自社のシステム環境や社内の状況についてこう振り返る。
老舗のSaaS事業者として23期連続増収、直近3年も年130%以上成長を続けてきたラクスだが、早期からサービスを展開して急成長を遂げてきたが故の課題も抱えていた。「急激に拡大するビジネスに対応するため、既存のシステムをスケールすることを第一とし、システムのリファクタリングや改修・修正の優先度は低くなっていました。またSaaSの常として、お客様の要望を満たす新機能開発が不可欠で、システムアーキテクチャーなどには、あまり目を向けられていなかったというのが実態で、“ガラパゴス化” していた部分もありました」(金本氏)。
これらの結果としてシステムの効率や運用の効率に課題感が残るなか、インフラ開発部に入社した金本氏は、早速行動を開始する。「仮想化など着手できるところから進め、同時に既に世間で利用が拡大していたKubernetesも導入に向けた対応も開始しました」(金本氏)。
開発本部インフラ開発部 部長
金本 宏司 氏
早期からKubernetesトレーニングを提供し、講師・教材にも優れたクリエーションラインを選択
部門内へ浸透を図るために、金本氏はコンテナ化の必要性ついてレクチャーを行ったり、書籍を使った輪読会を開催したりするなどの取り組みを進めた。しかしKubernetesは、決して理解しやすいものではない。「今までの運用形態とは全く異なるため、単にコンテナをオーケストレーションするということを理解できたとしても十分ではなく、エコシステムやコンポーネントなど新しい概念についても理解する必要がありました」(金本氏)。
そこで金本氏の頭に浮かんだのは、以前の会社で部下に受講させたクリエーションラインのトレーニングサービス “Kubernetes基礎編”だった。金本氏は「クリエーションラインはKubernetes等への知見が広く、トレーニングについても早期に提供を開始していました。前職で多くのメンバーを育成して頂いたという実績もあり、信頼できると考えました」と話す。
Kubernetesトレーニング 講師
青山 真也 氏
これら諸々の優位性を考慮の上、金本氏はクリエーションラインの“Kubernetes トレーニング基礎編”の採用を決定。インフラ開発部内から受講を希望したメンバーをトレーニングへ送り込んだ。
単なる機能紹介に留まらない“実運用を意識した”最新のトレーニングカリキュラム
2023年7月現在、既にラクスのエンジニア10名がトレーニングを受講しているが、その効果について金本氏は、「参加者にとっても良い経験となったようで、基本的な用語やコンポーネントを理解し、基本的なオペレーションはできるようになり結果としては満足です」と話す。
「Kubernetesの概要や提供機能といった基礎の習得だけでなく、『実際のシステムではこの部分に気を付ける必要がある』『運用ではこのようなポイントが重要になる』といった、実務で役立つ具体的な面についても学ぶことができたというフィードバックがありました。実際にトレーニング受講後、現場でkind(Kubernetes In Docker)を使用してローカル環境で検証を行ったという話も聞き、実践的な面でも大きなメリットがあったと感じています」(金本氏)と強調する。
青山氏は「認定取得を目的とする他のKubernetesトレーニングは、提供機能に特化した内容に閉じているものも多いですが、クリエーションラインのトレーニングでは、たとえば“アップデート“について説明する場合でも、どうやって実施するかだけでなく、なぜこのようなアップデートをしなければならないのか、またこのようなユースケースではどんなアップデートの形式を採用すべきかといった、具体的に現場で使える内容を織り交ぜながら講義を行っています」と話す。
また、トレーニングコンテンツの刷新については、「かなり細かくアップデートを繰り返しています。講師陣もずっと現場で仕事をしており、つねに最新の動向を追っていますから、トレーニング前に急に最新情報が発表された場合でも、画面表示しながら口頭で説明することができます」(青山氏)と話し、トレーニングで提供するTipsとも言うべき口頭での情報共有の重要性を強調する。
一般にトレーニングというと、受講するという形のみで十分な成果が出せない参加者も少なくないが、インフラ開発部から参加したメンバーは高い意欲をもってトレーニングに臨み成果を上げた。「今後発生する新規サービスのプラットフォームについては、コンテナ化ができないチームには任せないと宣言しました。このため、全員がその準備という明確な目標をもって、自薦の形でトレーニングに参加したのだと考えています」(金本氏)。単にトレーニングの受講機会だけを与えるのではなく、その意義や受講後の活用まで含めた事前の定義付けが功を奏したともいえる結果だった。
こうしてトレーニングの成果を把握した金本氏だが、同時に単純な“Kubernetesの基礎習得”というだけではない、もう1つの狙いがあった。それが「組織作りの一環としての技術教育」だった。
組織作りの一環としての技術教育でも確実な成果を上げる
実際に2年前、インフラ開発部に入社した金本氏に対して会社が求めたのは「人材のマネジメント」だった。所属メンバーのモチベーションと技術を向上させ、「毎日楽しく出社できるような組織」にすることが金本氏のミッションだった。
「ここで意味する楽しさは、怒られないことや、心理的な安全性からもたらされるのではなく、たとえば市場の中で一流の仕事ができた時に得られるものだと考えています。そのためには、教育によってシステムも一流、適正なコスト感覚や人との接し方も一流にする必要があります。最終的には、実力で裁量権を勝ち取り、楽しく仕事ができるようになるというところを目指して欲しいと考えました」と金本氏は話す。
Kubernetesに関して、現実的には導入による劇的な効果が発揮されることは稀だとしながらも、金本氏は社内でこのような新たな取り組みを行うことの重要性について言及し、「コンテナ化しやすい新しいサービス、規模が小さいサービス、さらに開発の意欲が高いシステムを選んで導入すると成果が出やすくなります。そして社内でこのような新しい仕組みを使った運用を開始すれば間違いなく目立ちますよね。他社ではなく同じ会社内だからこそ意識するはずです。このような状態を作ることを目的にスタートを切ったKubernetesの利用を止めることなく継続的に展開していけると考えています」と話す。
また、組織作りに触れ、「Kubernetesによる自動化は、究極的にはコスト削減の施策と言えるでしょう。社内的にはコスト削減のための施策を追求するとアピールしつつ、このような新しい技術を積極的に学習させることで、メンバーの市場価値を高め、彼らにとっても楽しくやりがいのある職場を実現できたらと考えています」と話す。
今後の展望:コンテナ化を本格的に推進すると共により上級のトレーニングも有効活用
金本氏が推進してきた2年におよぶ取り組みは、今、実を結びつつある。
今期、上位組織である開発本部の重点取り組み項目として「コンテナ化」が設定された。また同社最大のサービスである「楽楽シリーズ」を支える一部の基盤としてのKubernetes実装についても、来期早々に実現できるよう開発チームで検証が進められている。
青山氏はラクスの取組みを総括するコメントとして、「従来のシステムやオンプレミス環境、VMなどを使用している会社が、コンテナ技術やオーケストレーションの導入を進めようと考えた際に課題となるのは、技術を知っているかどうかよりも、それらに切り替えたことによるメリットについて合意がとれ、また導入によるビジネス上のメリットを説明できるかという点なのです。そんな意味でも、ラクスさんほど新たな仕組みの導入が上手く進んでいる会社さんは稀だと感じています」と話す。
今後のKubernetesトレーニングについては、すでに今期は上級である「セキュリティ編」の受講が確定している。「今期予定されているトレーニングが“セキュリティ”と“オブザーバビリティ”だったため、セキュリティ編を選択しましたが、他のテーマについても予定されれば受講を検討したいと考えています」と金本氏は意欲を示す。
青山氏は、今後への期待を込めて「今後を考えると必須だと言えるクラウドネイティブ系の技術にいまから取り組むことで、ビジネス的にかなり強い状態にもっていけるのではないでしょうか」と話す。
最後に「究極的にはメンバーが楽しく仕事を進められればそれで良いと思っています」と言って、今回のインタビューを締めくくった金本氏。システム面、そして組織面における大胆かつ緻密なアプローチは、これからKubernetesなど新たな仕組みの導入や、それに合わせた組織作りを考える意思決定者にとって、一つの有効な指針となるだろう。