お客様情報
■ 企業概要
1919年11月、萱場発明研究所として創業以来、人々の暮らしを安全・快適にする技術や製品の提供を通じて、広く社会に貢献するカヤバ株式会社。現在では、四輪車・二輪車向けの緩衝器などを扱うAC事業、産業用油圧機器などを扱うHC 事業、さらに特装車両、航空機器、電子機器に関わる事業など幅広いビジネスを展開。2021年度は売上高 3,884 億円、親会社の所有者に帰属する当期利益 225 億円を計上するなど、過去最高の業績を上げている。
■ 設立:
1919年11月19日
■ 本社所在地:
東京都港区浜松町二丁目4番1号世界貿易センタービルディング 南館28階
■ 資本金:
276億4,760万円(2021年9月30日現在)
■ グループ従業員数:
14,472名(2021年度・連結)4,032名 (2021年度・単独)
取材当時の情報です
※写真左より、岩塚氏、西尾氏
- 導入ハイライト
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- 手作業のソースコード管理からの脱却と大規模開発に向けGitLabを導入
- GitLabをコアに据え各種リスクやミスを排除しプロジェクト管理を強化
- クラウド環境への移行および新人教育など利用範囲の拡大
システム開発における「手作業によるソースコード管理」からの脱却
技術本部 DX 推進部
専任課長
西尾 昭彦 氏
また、ソースコードに変更が発生した場合にも手作業であるが故の課題が見られた。「変更の差分については、修正した担当者のみが把握している状況であり、ミスや問題を排除するためのダブルチェックも実施できていませんでした」(岩塚氏)。このような課題を解決するため、同部門では2019年半ばにWebベースのDevOps支援プラットフォームであるGitLabのFree版を導入。手作業によるソースコード管理からの脱却を図った。
より大規模な開発を前提とした管理機能の強化に向け有償版 GitLab Premium を導入
こうして課題を解決したDX推進部だったが、導入から約2年の実運用期間が経過してIssueやCI/CD の利用が開始され、GitLab を使用するメンバーが増加するにつれさらなる課題が浮上してきた。「Free版の場合には、Issueに対して1人しかアサインすることができません。このため IssueBoard の “To Do” には、このアサインされた1人が表示されるだけで、他の担当者は自分のタスクとして把握することができませんでした。さらにIssueの重み付けができない点や、対象となるIssueの前後関係も分からないといった点が課題になってきました」と岩塚氏は話す。より大規模なシステム開発を想定すれば、これらの課題が作業効率の低下や作業精度の劣化を招くことは明らかだった。
有償版である GitLab Enterprise Edition (EE) のPremiumでは、大規模なシステム開発を前提としたプロジェクト管理機能の強化が図られている。例えば、1つのIssueに対する複数の人のアサイン、Issueのウェイト(重み付け)や関連するIssueの把握なども可能に。また、管理者による制御、マージリクエストの承認や複数人でのコードレビュー承認など、プロジェクト管理面でも有効な機能が多数提供されている。
技術本部 DX 推進部
岩塚 晃成 氏
これらを念頭に有償版への切り替えを決定したDX推進部では、ネット上でGitLabの代理店を検索して「最も重要視していた日本語によるサポートが可能な点を評価し」(岩塚氏)、クリエーションラインを選定。こうして 2021年6月、DX推進部は GitLab Enterprise Edition (EE) Premium を正式に導入した。
システム概要:開発・運用とセキュリティ対策が一体となった新システム
GitLab Premium の導入から約1年が経過した現在(2022年8月)、DX推進部における日々のシステム開発プロセスはGitLab上で展開されている。
■ 開発内容のIssue化
開発内容のIssue化では「GitLabのマイルストーンの機能を使って、これに紐づく子タスクをIssueとして作成します。各Issueにはラベル付けを行い、これによってIssue Boardでの全体確認を可能にします」(菊池氏)。有償版にしたことでIssueに対して複数の人をアサインすることが可能になったため「誰がどれだけのタスクを抱えているかなど、全体の状況を俯瞰しながらプロジェクトを進行できるようになりました」(菊池氏)。
技術本部 DX 推進部
菊池 貴好 氏
■ デベロップブランチへのマージ
デベロップブランチへのマージではプロジェクト管理者だけでなく、もう1人のレビュワーを参画させる対応をとっている。例えばDX推進部では Terraform や Serverless Framework などを使用しているが、「必ずしもプロジェクト管理者がこれらのツールに習熟しているとは限らないので、有識者をレビュワーにくわえ、表記として問題がないか、リソースが破壊されるリスクがないかなどを確認し、問題がないと判断した後、プロジェクト管理者がマージを行います」(菊池氏)。マージ後にCI/CDパイプラインが走るが、実行計画までの自動実行に留めてあり、実行計画のログを確認したうえで手作業によりデプロイを行うという確実なステップが踏まれる。デベロップブランチへのマージでは、開発環境に各リソースがデプロイされるため、実際のリソースを使って動作検証を行う。問題なければマスターブランチへマージを行い、本番環境へデプロイされてシステム運用に移る流れとなっている。
これら一連のステップが完了するとGitLabのパイプラインが走り、コンテナレジストリから各種イメージを落とし、クラウドへのデプロイが実施されるという流れになる。なお、DX推進部では社内の担当者に向けドキュメントの提供を行っているが、ここでもGitLabのPages機能によって即座にデプロイすることで、迅速な対応を可能としている。
導入効果:手作業によるリスクや各種ミスの排除、さらにプロジェクト管理の強化
Free版、そしてPremiumのGitLab採用を通じて、DX推進部は既に多くの明確な導入効果を上げている。
当初の課題であった手作業による対応からの脱却という点について岩塚氏は、「まず確実なソースコード管理が可能となった点を挙げることができます。手作業を排除したことによりリスクの低減が図れたことは大きな導入効果です」と話す。またドキュメント管理やアジャイル開発についても触れ、「今ではプロジェクト毎にIssueがあり、階層管理もできるため、これをドキュメント管理に利用しています。新人が配属された場合にもドキュメントをまとめて格納した場所を示し、すぐに利用を開始してもらうことができます。またチケット管理を行い、アジャイルな開発を進めることも可能になりました」と付けくわえた。
菊池氏は「Issueと開発内容を紐付けられるようになった点が、最も大きな導入効果だと思います。また、開発後のCI/CDプロセスをきちんと構築することで、人手による設定ミスなどを排除できるようになった点も評価できます。さらに、複数のレビュワーを立てることが可能になったことで、デプロイしてからの後戻りがなくなり、トータル的な作業工数を削減すると共に、各種のミスを減らすことができるようになりました。これらもまたGitLabの導入効果と言えるでしょう」と強調する。
一方、管理側からの視点で西尾氏は、「いままでIssue管理自体をやってきていなかったこともありますが、今回のGitLab導入によって開発プロジェクトの進捗確認ができるようになった点は、管理側からすれば非常に大きな導入効果と言えます」と話す。
導入効果に合わせ、GitLab導入におけるクリエーションラインの貢献という点に触れ、岩塚氏は、「問題が発生した際には『そこまで必要か』というぐらい詳細に、かつ真摯な態度でお話を聞いていただき、即座に解決に向けた回答が返ってきました。日本語でのサポートにも満足しており、クリエーションラインを選定して本当に良かったと実感しています」と話す。GitLabの管理を担当する岩塚氏は、半年に1回程度開催されるクリエーションライン主催のCSMでの情報収集や、CI/CDのトレーニングの効果などについても高く評価している。
今後の展望:クラウド環境への移行、適用範囲と利用ユーザーの拡大
GitLabの採用により多くの導入効果を得たDX推進部だが、今後の展開についても既に検討を開始している。
岩塚氏は次の2つの点について言及する。
「現在はGitLabをオンプレミスのサーバーで使用していますが、対災害性や今後の規模拡大を考慮し、スケールアップやスケールダウンが簡単にできるクラウド環境への移行を考えています。また社内でのドキュメント文化を促進するために、GitLabのハンドブックを作成すると共に、検索性に優れたドキュメント提供用のサイトを構築し新入社員の学習にも役立てたいと考えています」
西尾氏はDX推進部が運用するIoTプラットフォームについて触れ「現在はまだ導入し始めたばかりの段階ですが、今後全社的な展開を計画しています。弊社は海外にも拠点があるため、それらも含めてこのIoTプラットフォームを展開し、データの収集と分析をさらに推進することを考えています」と話す。これに合わせ、当然GitLabの適用範囲や利用ユーザーも拡大していくと予想している。
カヤバ株式会社における全社規模でのデジタルトランスフォーメーションを支えるDX推進部。先進技術を駆使した様々なシステムの構築・運用を担当する同部門にとって、開発プロセスの効率化、ミスやリスクの排除、そしてプロジェクト管理の強化に大きく貢献するGitLabは既に必要不可欠な存在となっており、今後も様々な利用シーンでその真価が発揮されることだろう。
取材日:2022年8月3日