データ駆動型社会の実現に寄与する“自律型協働ロボット”の開発を進める京セラ ロボティクス事業部が開発基盤の中核としてGitLabを採用

京セラ株式会社

お客様情報

GitLab

京セラ株式会社

■ 企業概要

1959年、京都市中京区でファインセラミックスの専門メーカー「京都セラミック株式会社」として創業。現在ではグローバルな規模で、産業・車載用部品、半導体関連部品等を提供するコアコンポーネント事業、機械工具、ドキュメントソリューション、コミュニケーション関連製品を提供するソリューション事業、さらに電子部品事業などを展開している。

■ 本社所在地:

京都市伏見区竹田鳥羽殿町6

■ 設立:

1959年4月1日

■ 資本金:

115,703百万円

■ グループ従業員数:

78,490名※持分法適用子会社、持分法適用関連会社は除く(2021年3月31日現在)

取材当時の情報です

※写真左より、竹本氏、大浦氏、石田氏、田尾氏

導入ハイライト
  • モノ作りの世界が抱える課題を解消する自律型協働ロボットの実現
  • 幅広いOSSの活用を前提とした開発基盤の実現に向けGitLabを選定
  • DevOpsの推進、SBOMとの連携、そして開発プロジェクトの運用支援
1959年の創業以来、「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」という経営理念のもと、着実に事業を展開する京セラ株式会社(以下、京セラ)。同社における新規事業開発テーマの一つとして2019年に設立されたロボティクス事業部では、人と共に働ける協働型ロボット活用の機会を、広く社会に浸透されるためのシステム作りに注力している。広範にわたるオープンソフトを駆使し、自律型協働ロボットの開発を進める同事業部が、その開発基盤の中核として選択したのは、国内代理店としてクリエーションラインが提供するGitLabだった。

データ駆動型社会実現に寄与する自律型協働ロボットの開発

「協働型ロボットを導入するためには、プログラミングおよび現場での作業に関する高度なスキルが不可欠になります。また、現場の分析に基づいてハード/ソフトウェアをインテグレーションする工程は、数ヶ月から半年近くの工期がかかり、大きな投資が必要でありながら、導入後の製造品種変更や作業工程の変更は困難であり、一定の反復作業にしか適用できません。スキルを持つ人材の不足、長い工期、変更の難しさが課題となっています。そして、この課題を解決するのが、ネットワーク接続された自律型協働ロボット(Connected Autonomous Co-bot)なのです」(石田氏)。

自律型協働ロボットは、実際の現場の状況に応じてロボットが自律的に行動を変化させ、最適化を行うものであり、ネットワークを介して様々なアプリケーションやクラウドサービスと連携。CPSのデータを活用しながらインテグレーションの負荷を大幅に軽減する。ロボティクス事業部では、この自律型協働ロボットの開発にターゲットを絞り、また同時に、サイバー空間の仮想環境での効率的なシステム開発やシミュレーションによる検証を実現し、UX(User Experience)に関わるデータから価値創造を行うサービス基盤として、オープンロボティクスプラットフォームの構築にも踏み出した。

OSSの活用を前提にGitLabを採用。ROSコミュニティ等と連携を図りながら開発を推進

「ROS(Robot Operating System)関連のユーザーグループやコミュニティを通じて、世界中で皆が一緒になって開発していこうという気運が高まっており、公開技術も増えてきました。そこで、これらと連携を図り、オープン化されている周辺技術も活用しながら開発を進めていく形が最善と考えました。またOSSの活用を前提とした開発環境ではGitがキーになると考え、実際の製品・サービスについて比較検討した結果、GitLabの採用を決定しました」(田尾氏)。

導入にあたっては、自分達でメンテナンスしなくても済む点などを評価し、同事業部ではGitLab社がホストするフルマネージドのSaaSを利用し、国内代理店であるクリエーションライン経由で購入している。

クリエ―ションラインは、2017年に米GitLab社とパートナー契約を締結し、GitLabのサブスクリプション販売に加え、日本語サポートデスク、導入コンサルティング、インテグレーション、運用サポートサービス、さらにトレーニングサービスなど、幅広い関連サービスを提供している。

GitLab CI/CDでDevOpsを推進。SBOMとの連携、開発プロジェクトの運用支援にも活用

・GitLab CI/CDによるDevOpsの推進
GitLab CI/CD 環境を活用した DevOps の実現について、田尾氏は「現在、全て完成しているわけではありませんが、DevOps の流れが出来てきている状態です。GitLab の Issue や Pages、CI 環境を利用してコンポーネント開発を実施しています。CD にしては、京セラが提供するクラウド環境に更新されたパッケージを登録し、客先のロボットに更新されたパッケージをダウンロードできるようにする仕組みを構築中です」と話す。

・SBOMとの連携
また同事業部では、GitLabを基盤とした開発環境とパブリッククラウド上に構築したSBOMを連携させることで、利用しているOSSの管理を行っている。

この仕組みが構築されたことで、開発者側は使用の都度、OSSのバージョンを管理するなどの手間が省け、本来注力すべき開発作業に集中することが可能となる。なお、自律したSBOM環境とGitLab環境との間は、クローン要求と対応したクローンの送信による疎結合な連携となっているため、柔軟性の高い環境と言える。

・開発プロジェクトの運用支援

このようにGitLabと他のツールを連携することで、手作業で実施するよりもはるかに効率よく、開発プロジェクトの運用支援を行っている。なお用途に応じてCIとJenkinsを使い分けてはいるが、実際にはJenkinsのジョブの設定スクリプトもGitLabのRepositoryで管理しており、ジョブもDocker Containerで動かしてはいるが、GitLabのContainer Registryに登録されている。「ジョブの登録についてもCIを使って自動化しており、私がファイルを上げたらCIが動いて登録が行われるという流れになっています」(竹本氏)。同事業部では、今後のOffice 365との連携も視野に入れて自動化の対応を進めている。

顕在化しつつある優位性:OSSとの密な連携、素早い環境構築、優れたコストメリット

まだ開発プロジェクトが完了していない状況であるため、GitLabに関する導入効果などについて言及するには早い段階だが、複数の面でその優位性が顕在化してきている。

田尾氏は「GitLabを使う1番のメリットは、OSSとの密な連携にあると感じています」と強調する。今回のプロジェクトでは広範にわたるOSSが使用されているが、幅広い連携機能を備えたGitLabは、様々なOSSを最大限に活用するための統合開発基盤として、既にその存在感を高めている。また田尾氏は、開発環境構築までの早さについて触れ「使い始めてIssueを作りながらBranchの管理等を行いましたが、SaaS環境ということもあり、自分達で環境に対して何かを作らなければならないという必要がなく、素早くスタートできた点は評価できると思います」と話す。さらにプロセスについては「非常に軽いと感じています。さらに自分でスクリプトを組んでCI環境を作れば、どんどん軽く、速くできると思います」と感想を述べた。GitLabは非常に多機能なものとなっており、個々のツールを買い揃えた場合に比べコストメリットも高く、さらに統一されたUIを介して、どの機能についても同じエクスペリエンスで取り扱える点も大きな優位性となっている。

2022年頭には実運用を開始する自律型協働ロボットプロジェクト。
現在のモノ作りの世界が抱える課題を解消し、データ駆動型社会実現に寄与する本プロジェクトを通じて、GitLabが持つ大きな可能性が、今後具体的なメリットとして次々に開花していくことだろう。

取材日:2021年12月3日