お客様情報
■ 事業概要
東京海上日動火災保険東京海上日動あんしん生命保険等 東京海上グループの情報システムの企画・ 提案・設計・開発・保守・運用
■ 本社所在地:
〒206-8510東京都多摩市鶴牧 2-1-1多摩東京海上日動ビル
■ 設立:
1983年9月
資本金:
5,000万円(東京海上日動火災保険全額出資)
従業員数:
1,410名(男性 945名、女性 465名)(※2021年4月1日現在)
取材当時の情報です
※本事例取材はリモートインタビューの形で実施
- 導入ハイライト
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- 開発のスピード化と楽観的排他制御への対応に向け GitLab を導入
- ❝影響度の少ない大規模システム❞への導入を経由し導入リスクを低減
- 4,000ユーザーの国内最大規模GitLab環境でシステム改定コスト7割減を実現
以前のホスト中心のシステムから、フロントエンドにサーバーを使用したシステムへの移行が進み、今後クラウドを活用した開発も増えてくる中、ビジネススピードの加速により、開発スピードの向上が求められるという状況に対応するため、同社では❝楽観的排他制御❞を実現する新たな開発支援ツールとしてGitLabを採用。国内最大規模のGitLab環境を実現し様々な導入効果を得た。
導入の経緯:開発のスピード化に対応できる❝楽観的排他制御❞へのシフト
「GitLabの導入は、弊社での開発ツールに関わる二度目の大きなアップデートと言えるでしょう」- 同社ITインフラサービス本部 インフラソリューション二部 課長代理で、今回のGitLab導入プロジェクトのリーダーを務める中原大佑氏はこう話す。
保険金融グループである東京海上グループのシステムを支える同社は、1990~2000年代には、ホストを主体とした基幹システムを使用しており、各種資源の管理はホスト内で行われ、「悲観的排他制御」つまり、チェックアウトロックによる開発形態が取られてきた。2000年代中頃からは、フロントエンドにサーバーを使用し、ホストと連携させる形態へのシフトが進行。この段階で、開発形態の変化への対応を考えた同社は、バージョン管理ツールを導入してプログラム資源の管理に乗り出す。
インフラソリューション二部
課長代理
中原 大佑 氏
しかしその結果は想定外のものだった。「これまでのようなチェックアウトロックではなく❝楽観的排他制御❞へのシフトを図り、ブランチ管理のような形で開発を行うことを考えましたが、従来のホスト対応を行ってきた開発者達がこの変化について行けず、ツールは導入したものの、これまで通りのチェックアウトロックによる排他制御に甘んじる状況が続きました」(中原氏)。
そして2017年、同社にとって二度目となるツール導入の計画が浮上する。当時を振り返り中原氏は、「今後想定されるホスト縮小、サーバー主体のシステム環境への流れの中、一度は断念した❝楽観的排他制御❞へ開発の方向をシフトしていきたいと考え、その仕組みとしてGitLabの導入を考えました」と話す。当然Gitそのものや、他社ツール採用も検討には挙がったが、「CI/CDを含め総合的な利用が可能な点やコストなどを評価し」(中原氏)GitLabの採用を決定した。
❝影響度の少ない大規模システム❞への導入を経由することで基幹システムへの導入リスクを低減
こうして2017年末にGitLabの採用を決定した同社だが、その後のGitLab導入工程に目を向けると、金融機関にふさわしい、リスクを最小限に抑えた導入戦略が取られたことが分かる。中原氏は「最初は2018年に小規模な個別システムにGitLabを適用し、次に大規模なものの影響度はそれ程大きくないドキュメント管理システムをGitLabで刷新しました。2019 年のことです。そして2020年から2021年にかけて、基幹システムの資源管理に向けGitLabを適用しました」と話す。最終ターゲットである基幹システムへ適用する前に、“ユーザーは多いが仮に問題が発生しても本番環境に影響を与えない”ドキュメント管理システムを挟むことで、ユーザーの習熟度向上を図り、スムーズかつ安全なシステム移行を実現したのだ。ドキュメント管理システムへの導入を行った段階で、同社の全社員の内の約8割がGitLabの経験を積むことができた。
インフラソリューション二部
シニアエンジニア
笹川 熙 氏
導入効果:国内最大規模となる4,000ユーザーのGitLab環境で改定コスト7割減など各種効果を実現
2021年から基幹システムへGitLabの適用を開始した同社だが、現状このシステムは、4,000ユーザーライセンス(Premium)のGitLab導入を誇る国内最大規模のものとなっており、社員およびパートナー会社も含めたGitLabユーザーが存在する。
運用における独自の工夫として、以前はEXCELベースで作成した本番申請等をSalesforceのワークフローに引き渡す形で実施してきたアプリケーションの本番適用の流れを、プロジェクト管理ソフトウェアであるRedmineをフロントに据えてチケットを切り、マージリクエストの生成および承認を実施することで、Salesforceのワークフロー承認の代替とした。つまり承認システムも込みで、GitLabを適用したシステム内に一本化を図ったのだ。「まさに社内でのシステム運用の文化を変えたと言えるでしょう」(中原氏)。
新型コロナ感染症拡大の影響もあり、当初の計画より若干開始が遅れたGitLabの実運用だが、既にその効果が現れはじめている。中原氏は“過渡期ですが”と前置きしつつも「システム運用側の話ですが、今回、GitLabの導入でシステムを一本化したことにより、フロントエンドサーバのリプレイスに伴う開発ツールの改定コストを約7割も削減することができました」と強調する。以前のシステムでは作り込み等もあり、システム改定コストが膨大なものになっていたが、今回のGitLab導入とそれに合わせた刷新により、開発期間や関連コストを大幅に圧縮することができた。
品質向上という点でも効果が現れた。「以前はソースと実行環境がツールによって連携される形となっていたため、ステージング環境に反映した時に差異が発生するといった障害が見られましたが、今回GitLabが導入されたことにより、ソースからモジュールを作って配備するまでの流れを一元管理することが可能となり、ソースとステージング環境に入っている資源の差異が無くなり、品質向上に繋がりました」(中原氏)。
さらに、GitLabに関連したクリエーションラインの貢献という点での評価も挙がっている。同社ITインフラサービス本部 インフラソリューション二部 シニアエンジニアで実際にGitLabを担当した笹川熙氏は、「今回のような新しい技術の導入にあたっては、何から着手すべきか、という点も含めて分からない部分も多かった状況でしたが、クリエーションライン社側に私達のやりたいことを伝えてご提案を受けるという形でサポート頂き、無事に今回の環境を構築することができました」と話す。砂畑氏も「今年はライセンスの変更があり、GitLab本社とのやり取りが頻発しましたが、クリエーションライン社が間に入ることでスムーズに進行することができました。さらに、GitLab社側では対応できない旧バージョンの製品についてもベストエフォートの形でサポート頂き、非常に助かりました」と話す。
インフラソリューション二部
課長
砂畑 尚徳 氏
現在は、実運用開始から間もない段階にあるGitLabを使った同社の基幹システムだが、今後さらなる導入効果が顕在化してくることは確実と思われる。
今後の展望:横展開も視野に入れながらGitLabの活用をさらに拡大
GitLabの導入により様々な導入効果を享受した同社だが、今後の展開についても検討が開始されている。
「これからはシステム間の連携が重要になってくると思います。ソースファイルと実際の実行環境で使うモジュールの連携を図りながら、よりシンプルで造り込みの少ないものに変え、全社的にGitLabを使用したシステムの横展開を進めていきたいと考えています」と笹川氏は話す。
中原氏は、「これから開発される一般的なシステムは、全てGitLabを使った基盤上に乗ってくると考えています。これに伴い、利用者の更なる増加が想定されますが、GitLabへの習熟度の向上に合わせ、現在は若干制限をかけている機能等についても開放し、結果として生産性の向上などに繋げたいと考えています。今後は GitLabを前提とした、より利便性の高い開発環境が社内に浸透していくことを期待しています」と今回のプロジェクトを総括した。
コロナ禍という向かい風の状況下、導入における戦略的なステップの設定などの工夫により、国内最大のGitLab環境構築を成功裏に完了した東京海上日動システムズ。日々進化し続ける同社の開発基盤の1つとして、GitLabはさらにその適用範囲を広げていくだろう。