科学技術イノベーション政策研究センター(SciREXセンター)

お客様情報

GitLab

科学技術イノベーション政策研究センター(SciREXセンター)

科学技術イノベーション政策研究センター(SciREXセンター)

事業内容
「科学技術イノベーション政策における『政策のための科学』推進事業」(SciREX事業)の中核的拠点として、政策研究大学院大学に設置された。科学技術イノベーションが関係する諸問題を解決するため、政策形成と研究の間の橋渡しをする
代表者
科学技術イノベーション政策研究センター長 白石 隆
設立
2014年8月
URL
https://scirex.grips.ac.jp/

取材当時の情報です

[prologue]文部科学省が2011年度から実施してきた「科学技術イノベーション政策における『政策のための科学』推進事業」(SciREX事業)では、科学技術イノベーションへの期待の高まりを受け、客観的根拠(エビデンス)に基づく科学技術イノベーション政策形成の実現を目指してきました。その中核拠点たるべく、2014年に政策研究大学院大学に設置されたのが「科学技術イノベーション政策研究センター(SciREXセンター)」です。SciREXセンターの専門職として、研究のかたわら、SciREXセンターの企画運営を行っている岡村麻子様に、GitLabとOverleafを使った「コアコンテンツ執筆・公開システム」のお話を伺いました。[/prologue]

SciREXセンターで岡村様が取り組んでいらっしゃることは何でしょうか。

政策担当者、自然科学の研究者、社会科学の研究者、研究助成機関などで働く人、民間企業の人、一般市民などの社会のアクター、そうした人たちが共同作業をして適切な科学技術に関する政策決定をする、それがSciREXセンターの目指すところです。SciREXセンターの関係機関としては、政策研究大学院大学、東京大学、一橋大学、大阪大学、京都大学、九州大学、科学技術・学術政策研究所(NISTEP)、JST社会技術開発センター(JST)、研究開発戦略センター(CRDS)などがあり、研究者や実務家、大学院生や行政官などが集まってきます。政策のあり方を変えていきたい、そのために大学院レベルの教育を受けようという若手の行政官も多いです。

各々の専門分野は、自然科学・工学、医学、経済学、経営学、法学・政治学、社会学、科学技術社会論、科学コミュニケーションといった具合に多岐にわたります。各自が専門の軸足を持っているのはよいことですが、別の見方をすれば、教えられてきたことがバラバラであるとも言えます。科学技術政策を考えて議論する前に、共通して最低限持つべき知識は何か、「科学技術イノベーション政策の科学」のコアカリキュラムはどのようなものであるべきか、その確立に取り組んでいます。

今作成しているのは、コアカリキュラムの一歩手前にあたる「コアコンテンツ」です。「科学技術イノベーション政策の科学」を学ぼうという人が、最初に読むべき概論的なテキストとなるものです。執筆者は40人くらい、項目数がやはり40くらい、現在のページ数は200くらいでしょうか。このコアコンテンツの執筆・公開システムを、GitLabとOverleafを使って構築しました。コアコンテンツは将来書籍にする可能性もありますが、まずはWeb化を優先しています。


岡村 麻子氏

OverleafはLaTeX(ラテック、ラテフ)ベースの文書作成コラボレーションシステムですね。難しくありませんでしたか?

LaTeXは経済学畑の人にとっては、主流のツールであるようです。一方で、LaTeXに慣れていない人が多いのも事実です。今回のシステムでも、以前の文書はMicrosoftのWord形式のものが多く、それは、アルバイトやインターンの協力を得て、一気に変換しました。

LaTeXの最大のメリットは、論文や書籍にした時の美しさです。編集は、最初は難しく感じますが、慣れれば便利だと感じる面も出てきます。また、Overleafは、文書をオンラインでシェアして共同作業ができたり、リッチテキストで見ることができたりして、これまでのLaTeXに比べれば、かなりユーザーフレンドリーです。オンラインパブリッシングの未来を考えた時、Overleafの将来性を高く評価しています。

GitLabはどのエディションをお使いですか。GitLabを導入した理由は?

GitLabは「GitLab Starter」を使っています。GitLabを導入したのは、OverleafからWeb公開するところまで一気通貫でできるシステムを作りたかったからです。OverleafでPDFまではできるんですが、HTMLの方が良いという意見もあり、そこは外せませんでした。

システムを構築して期待した結果は得られましたか?

Overleafで直したものが、翌日にはWeb上のPDFとHTMLに反映されるようになりました。人間の作業が多くなると、ミスも発生しますし、時間も、お金もかかります。システム化することで期待されるスピード感は他に代えられないものです。

執筆者は、修正がすぐに反映されれば喜びます。また、今回のコンテンツは、コアであっても変わりゆくものだと考えているので、頻繁な更新が望ましいのです。2018年版、2019年版とアップデートしていくのに、今回構築したシステムは大きな力になるでしょう。コアコンテンツを授業で使って、「さらにこれが必要」とブラッシュアップしていければと思っています。

システム構築の過程で苦労したことは?

Overleafのバージョンアップに対して、スムーズに対応できなかったことがありました。あと、すべてを自分で調べることはできないので、NISTEPの小柴さんなど、詳しい人の助言や協力はとても助かりました。

今後の目標や課題はありますか?

まずはコミュニティの中でブラッシュアップさせるため、コアコンテンツの公開先を現在は絞っているのですが、将来は、より多くの人に読んでいただける形に持っていければと思っています。海外の研究者と交流すると多くの人が興味を持ってくれるので、英語版も作れればいいですね。科学技術イノベーション政策に対する関心は、世界中で高まっています。