GitLab導入事例

株式会社JR東日本情報システム 様
GitLabを活用したアジャイル開発基盤によって開発の劇的なスピード化、現場の要求に合致したアプリケーションの提供など様々な導入効果を実現

お客様情報


株式会社JR東日本情報システム

1987年、東日本旅客鉄道株式会社の設立に伴い発足した、総合企画本部情報システム部を前身とするJR東日本情報システムは、鉄道システムで培われた品質の高いシステム構築力と先端ICT等を活用するための研究開発を推進する体制を備え、現在ではJR東日本グループのICTを担う技術集団として、お客さまの信頼に応え、全ての人の心豊かな生活の実現に広く貢献している。

本社所在地

〒169-0072

東京都新宿区大久保三丁目8番2号新宿ガーデンタワー7F

設立

1989年11月24日

資本金

5億円

従業員数

1,573人※2020年4月1日現在

※取材当時の情報です
※写真左より、渡邊氏、長谷部氏、福丸氏、能戸氏、福澤氏、早瀬氏

Introduction


  • GitLabを活用したCI/CD 基盤で開発効率を劇的に向上
  • アジャイル開発により現場の要求に合致した高品質なアプリケーションを実現
  • アジャイルコーチングの経験を活かし実務における課題に柔軟に対処

JR 東日本グループのICTを担う技術集団として、鉄道事業ソリューション、Suica・駅サービスソリューション、生活サービスソリューション、システム基盤など各分野での、多岐にわたるシステム開発・運用等のサービス提供を通じて、社会インフラを支える株式会社JR 東日本情報システム(以下、JEIS)。

より迅速なシステム開発や価値提供のための手段を追求する同社は、新たなチャレンジとしてアジャイル開発に向けた取り組みを開始。クリエーションラインの支援の下、アジャイル開発用基盤の検証や関連トレーニングを経て、本番システムへの実装を行い、さらにこれを活用したアジャイル開発の実運用を開始し、様々な導入効果をあげることに成功した。


導入の背景:より迅速なサービスと価値提供に向け、アジャイル開発用基盤を検証する

「弊社は、JR東日本のシステム開発を担っており、多くの皆様が利用される鉄道インフラを支えるシステム、例えばSuicaや運行管理などのシステムを開発・運用しています。
このため、“安全・安心” の確保が最重要課題となり、システム開発もウォーターフォール型で、厳格なプロセスを踏んだものとなっていました。しかし、近年、お客様からより迅速なサービスの提供を求められるようになってきている状況を踏まえ、新たな施策として、アジャイル開発用基盤の有効性を検証の上、社内へ展開していくという取り組みを開始しました」-今回の取り組みに至る背景について、クラウド基盤部 ソフトウェア基盤プロジェクト マネージャーの早瀬友宏氏はこう話す。

クラウド基盤部
ソフトウェア基盤プロジェクト
マネージャー 早瀬 友宏 氏

全社展開に先立つ「検証」という位置付けになる今回の取り組みだが、実際に有効性が確認でき、実運用環境へ導入した段階での期待効果について、早瀬氏は2つのポイントをあげる。「“素早い価値の提供”と“人手不足への対応”を考えています。前者は、コンテナ基盤、CI/CD基盤、それらを使ったアジャイル開発によって、価値提供までを迅速化するというものです。後者は、今後人材不足が予想される中、弊社の業務の1つである基盤構築や維持管理、システム運用において、コンテナ技術を活かしたサーバーレス化によって省力化を図るというものです」(早瀬氏)。

しかし、このような新たな取り組みにおいて、JEISが単独でプロジェクトを推進することは現実的に困難だった。プロジェクト成功に向け不可欠となる信頼のおけるパートナーの選定が進められる中、浮上したのがクリエーションライン株式会社(以下、クリエーションライン)だった。

クラウド基盤部
ソフトウェア基盤プロジェクト
エキスパート 渡邊 敬之 氏

GitLabの正規代理店でアジャイル開発の豊富な実績を持つクリエーションラインを選択

クリエーションラインの存在を知り、実際に製品ライセンスやサービスを受けることになった経緯について、クラウド基盤部 ソフトウェア基盤プロジェクト エキスパートの渡邊敬之氏は、「今回の取り組みは、GCP(Google Cloud Platform)の利用を前提としていたため、グーグル・クラウド・ジャパン合同会社(以下、グーグル・クラウド・ジャパン)と共にコンテナ基盤の構築を開始しましたが、CI/CD基盤として何を採用すべきかのアドバイスを求めたところ、GitLabがお勧めであるという回答を得ました。そこでGitLabの導入を決め、同時にライセンスやサービスを提供する国内企業について調べたところ、クリエーションラインの名前が挙がりました。私達自身、前提知識がない状態からGitLabを使用する必要があったため、日本語でのサポートが不可欠と考え、正規代理店でもあるクリエーションラインにお願いすることを決定しました」と振り返る。

クリエ―ションラインは、2017年に米GitLab社とパートナー契約を締結し、GitLabのサブスクリプション販売に加え、日本語サポートデスク、導入コンサルティング、インテグレーション、運用サポートサービス、さらにトレーニングサービスなど、幅広い関連サービスを提供している。またグーグル・クラウド・ジャパンと繋がりもあったことから、今回JEISとのプロジェクトが始まった。こうしてJEISは、2019年9月にクリエーションラインと正式契約を締結。同年10月には、関連トレーニングへのメンバー参加を皮切りにプロジェクトを開始する。

アジャイルコーチングにより、開発における企業文化や意識を大きく変革

今回の契約では、GitLabライセンス(Premium)と共に、GitLabトレーニングとアジャイルコーチングが採用された。この中でも特に、3ヶ月間かけて実施されたアジャイルコーチングは、それまでウォーターフォール型の開発に携わってきた参加メンバーにパラダイムシフトとも言える大きなインパクトを与え、非常に有意義なものとなったが、同時に決して容易なものではなかった。今回、クリエーションライン側のアジャイルコーチとして、トレーニングを担当したヤマネコ(yamaneco)社の田中亮氏は、「これまでJEISの皆様は、トップダウンの文化の中で、ウォーターフォールという開発スタイルを取ってきました。そこから急にボトムアップの形態に変わろうとしても、切り替えるには覚悟が必要です」と強調する。

クラウド基盤部
IoT・ビッグデータクラウドプラット
フォーム構築プロジェクト
エンジニア 能戸 遥平 氏

アジャイルコーチングでは、技術面だけでなく、アジャイル開発を実現するための組織造りや企業文化の在り方、さらに関係者の意識面での変革なども含めたトレーニングを実践。通常の学習スタイルだけでなく、参加者が“体感”する場を設けることで、より深い理解を可能にする。

クラウド基盤部 IoT・ビッグデータクラウドプラットフォーム構築プロジェクト エンジニアの能戸遥平氏は、実際にアジャイルコーチングに参加した感想として、「アジャイル、マイクロサービス、コンテナ、CI/CDなど、それまで名前は聞いていたものの、実態については十分理解していなかった対象を学習するため、途中でリタイアするかも知れないという心配もありました。当然、最初は非常に厳しい状況でしたが、アジャイルコーチの田中さんによる、私達の企業文化や私達の意識を変革するようなコーチングによって、アジャイル開発を“体で覚える”ことができました」と話す。

渡邊氏は、当初、実組織におけるマネージメントを行う立場と、アジャイルプロジェクトにおけるスクラムマスターという立場のギャップに翻弄されたと話す。「マネージメントを行う立場では、自分が考えた仕事を部下に依頼する形で業務を進めますが、アジャイル開発におけるスクラムマスターは、他のメンバーをどうやってサポートするかという点に注力します。この切り替えが当初は難しかったと記憶しています。しかし田中さんのコーチングにより、アジャイルに関する理解を深めることで、2つの立場を確実に切り替えられるようになりました。この案件はアジャイル開発で対応すべきだが、こちらは不向きだといった判断や、何を守り、何を変えるべきかといった判断を自ら下せるようになった点は、大きな成果であったと実感しています」(渡邊氏)。

他の参加メンバーも一様に、アジャイルコーチングが従来の開発スタイルや意識を変革する上で有意義であったと発言する状況を見れば、この体験が有益かつ不可欠なものであったことは明らかだ。

全く経験のない状態から開始されたアジャイルコーチングだったが、短期間で達成されたその成果について、田中氏は、「ある意味 “無茶振り” とも言える3ヶ月間の中で、この大きな変化に対応し成長を遂げたことについては、本当に素晴らしいと感じています。これからGitLabを実際のアジャイル開発に役立てて行く段階になるかと思いますが、コーチングでの経験を最大限に活かしてもらえたらと願っています」と評価する。

アプリケーション担当者がインフラを意識する必要のないCI/CD 基盤を実現

トレーニング期間と並行する形で進められたGitLabの導入は無事に終了し、既に一部の本番アプリケーションの開発に活用されている。当初の計画通り、CI/CD基盤に対してGitLabを導入してソースコード管理を行い、コンテナ基盤となるGKE(Google Kubernetes Engine)で構成された開発、テスト、本番環境に対してアプリケーションをデプロイしている。

GitLabのライセンスについては、GitLabEnterprise EditionのPremiumを採用しているが、これは「マージリクエストの承認ルール」(検証済み)や「Kubernetes統合 / カナリアデプロイ」(今後検証)の利用を念頭に置いた判断だ。

GitLabの導入を担当したクラウド基盤部 ソフトウェア基盤プロジェクト エキスパートの福澤徹英氏は、今回の基盤構築によって、アプリケーション担当者の生産性向上が図られた点に触れ、次のように話す。

クラウド基盤部
ソフトウェア基盤プロジェクト
エキスパート 福澤 徹英 氏

「弊社内の人材は、インフラ担当者とアプリケーション担当者に大別されますが、私が在籍するクラウド基盤部は、ハードウェアやネットワーク、さらにOSより下のインフラ回りを担当します。逆にアプリケーション担当者は、これらのインフラではなく、アプリケーションそのものの開発に注力すべきです。今回のCI/CD基盤構築によってアプリケーション担当者は、インフラを意識することなく開発を進め、ビルドおよびデプロイすることができるようになります」(福澤氏)。リソースの増減が発生したような場合でも、サーバー側の設定などを意識する必要なく、アプリケーションの開発とデプロイに集中できるため、その生産性は大幅に向上すると考えられる。

導入効果: “数十倍どころではない” 圧倒的な開発作業の迅速化、現場の要求に確実に答えるアプリケーションの実現、実プロジェクトで活かされたアジャイルコーチングの効果

現状、本番アプリ開発でGitLabを利用しているという段階にあるJEISだが、GitLab導入による効果、アジャイル開発による効果、さらにクリエーションラインによるアジャイルコーチングの効果という3つの面で既に導入効果が発揮されている。

渡邊氏は、GitLabの導入効果について、「圧倒的に開発スピードが上がった点をあげることができます。ビルドからデプロイの作業が自動化されたことで、手間をかけずに何度もデプロイしてアプリケーションを確認し、見直しを行うことができます。これは非常に大きな導入効果と言えるでしょう」と話す。

クラウド基盤部
ソフトウェア基盤プロジェクト
長谷部 秋久 氏

従来通りに直接アプリケーションをインストールした場合、何度も入れ替えるという対応は大きな作業負荷となるだけでなく、現実的に不可能だ。今回のプロジェクトを通じて、GitLabをコンテナ技術と併用することで得られるメリットが明らかになったと渡邊氏は指摘する。そしてスピード化については、「従来の開発環境では、年に数回だったデプロイ回数が、今では1日に十数回も可能になっています。数十倍どころではない、大幅な効率改善とスピード化を実現することができました」と強調する。

「GitLabは友達である」と宣言するクラウド基盤部 ソフトウェア基盤プロジェクトの長谷部秋久氏は、これからが本当にGitLabを使用する段階だとしながらも、評価期間を振り返り、「自動でテストからデプロイまで対応してしまうGitLabのスピード感には、大きなメリットを感じました。この迅速な対応によって、ユーザーの反応をいち早く捉えることができるなど、アジャイル開発におけるスピード化のメリットを十分に享受することが可能となりました」と話す。

クラウド基盤部 ソフトウェア基盤プロジェクト エンジニアの福丸北斗氏は、アジャイル開発による現場の要求に合致したアプリケーションの実現という効果について、次のように話す。「要件定義、基本設計、詳細設計と段階を踏んで進められるウォーターフォール型開発の場合、最初の段階でアプリケーションの稼動イメージを現場に見せることが難しく、最終段階になってから漏れや微妙なズレが明らかになり、手戻りが発生するケースが少なくありません。しかし、アジャイル開発の場合には、現場と話しながら実際にモノを見せ ”これで行きますよ“といった、言わば後ろ側からのアプローチを取ることで、ズレや手戻りを排除し現場の要件に合致したアプリケーションを実現できることが、非常に大きな効果だと思います」

クラウド基盤部
ソフトウェア基盤プロジェクト
エンジニア 福丸 北斗 氏

もちろん、JEISが扱う社会インフラなど公共性の高いシステムの開発における、ウォーターフォール型のアプローチの価値は損なわれるものではない。しかし、より迅速な価値提供と現場の要求に対する確実な対応を求める現場の声に応えるためには、アジャイル開発が持つ特性を最大限に活かすことが最善の対処となる。

能戸氏は、クリエーションラインが提供するアジャイルコーチングの真の効果を、実際の開発プロジェクトで改めて体感した。「コロナ禍の状況の中、本格的なお客様向けサービスの開発をリモートで行いましたが、アジャイルコーチングでの経験を活かすことで、全く違和感なく対応できました。例えば、現状使用しているツールをもっと便利に活用するための施策を検討するなど、次々に改善を図っていくという思考になれたのは、間違いなく3ヶ月間のアジャイルコーチングで得られた体験によるものだと感じています」(能戸氏)。

これら各メンバーから挙げられた導入効果を総括する形で、早瀬氏は、「アジャイル開発の基礎や、あるべき姿、さらにマインドセットを理解し、習得するという目的でプロジェクトを実施しましたが、全てについて当初の期待以上の成果が得られました。クリエーションラインの多大な支援に深く感謝しています」と話す。

今後の展望:さらなる有効活用に向け、アジャイル開発基盤の全社展開を図る

短期間でのGitLab導入やアジャイル開発手法の習得など、通常では考えられないスピードで今回の取り組みを推進し良好な評価結果を得たJEISだが、今後の予定についても、既にいくつかの内容があがっている。

早瀬氏は、実際の展開規模に関する詳細は未定としながらも、「今年度は、6月以降、今回のコンテナ基盤を公開しており、パイロットプロジェクトの希望部署を募集している状況です。8月以降には実際の使い方についても社内で周知を図っていく予定です。またアジャイル開発の中でのペネトレーションテスト実現についても検討したいと思っています」と話す。

斬新な内容としては、現在の社内承認フローの刷新というアイディアも上がっている。福丸氏は、「あくまで内部的な構想の段階ですが、現在、紙ベースの資料を使って運用している社内承認のプロセスをGitLabの承認の機能によって効率化できないかという検討を行っています」と抱負を語る。当然、社内ルールの見直しなどを伴う対応になるため、近々の取り組みとはならないが、コロナ禍での在宅勤務や、在席でしか書類を確認できないことによる時間のロスなどを考えると、十分なメリットを秘めたプランと捉えることができる。

これまで厳格な開発プロセスによって“安全・安心”なシステム開発を実践してきたJEISが、今回の取り組みの成功によって、さらに素早い価値提供を実現するアジャイル開発の素地を得た意義は大きい。企業文化や意識面でのパラダイムシフトとも言えるこの変化が、今後の同社の提供サービスに反映され、私達エンドユーザーの目に留まる日も、そう遠くはないだろう。

アジャイルコーチ田中氏とプロジェクトメンバー
写真左から渡邊氏、長谷部氏、福丸氏、田中氏、能戸氏、福澤氏、早瀬氏